彼女の彼は、彼女

『彼女の彼は、彼女』：禁断の三角関係と笑いと涙の物語

1995年、フランスで生まれた映画『彼女の彼は、彼女』(原題: Gazon Maudit)は、型破りな三角関係と、社会の規範を軽々と飛び越える女性たちの姿を描いたコメディです。監督・脚本を務めたのはジョジアーヌ・バラスコ。主演は、ペドロ・アルモドバル監督作品でお馴染みの、スペインを代表する実力派女優ビクトリア・アブリルです。

物語の中心は、夫ローランと2人の子供を持つ、一見平凡な主婦ロリ。しかし、彼女の日常は、夫の隠された浮気によって一変します。親友アントワーヌと結託したローランの不貞を知ったロリは、激怒。そんな折、彼女は男性的な魅力を持つレズビアンのマリジョーと出会います。そして、運命的な恋に落ちます。

夫の浮気という衝撃的な事実と、新たな恋の芽生え。混乱するロリは、思い切った行動に出ます。彼女はマリジョーを家に招き入れ、夫を寝室から追い出してしまいます。こうして、夫と妻、そしてレズビアン女性という、想像を絶する3人暮らしが始まるのです。

この奇妙な同居生活は、時に笑いを、時に切なさを、そして時に驚きを観客に与えます。それぞれのキャラクターが抱える葛藤や、社会的な偏見、そして女性の自立といったテーマが複雑に絡み合い、観る者の心を揺さぶります。アブリルの圧倒的な演技力と、バラスコ監督の巧みな演出により、登場人物たちの感情や心の機微が繊細に表現されています。

原題の「Gazon Maudit」は、「呪われた芝生」や「禁断の芝生」と訳されます。これは、女性の性器を意味する隠語「Gazon」と、同性愛者を指す「Maudit」を組み合わせた言葉で、作品が扱う同性愛というテーマを象徴的に示しています。

『彼女の彼は、彼女』は、単なるコメディとしてだけでなく、女性の生き方、愛のカタチ、そして社会における性差や偏見といった、多くの示唆に富む作品です。時代を超えて、私たちに多くの問いかけを投げかけてくれる、フランス映画史における重要な1作と言えるでしょう。

キャストには、ロリ役のアブリル以外にも、マリジョー役のバラスコ自身、ローラン役のアラン・シャバ、アントワーヌ役のティッキー・オルガドなど、実力派俳優たちが名を連ねています。脇を固める俳優陣も個性的で、物語に深みを与えています。

この映画は、ユーモラスな展開の中に、社会問題や人間の心の複雑さを巧みに織り交ぜ、観客に深い印象を与えます。もしあなたが、予想外の展開と、人間ドラマに富んだ映画を探しているのであれば、『彼女の彼は、彼女』は必見の作品です。フランス映画特有のセンスと、個性豊かなキャラクターたちが織りなす物語は、あなたをきっと魅了するでしょう。ぜひ、この忘れられない映画体験を味わってください。

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