往生

往生：仏教における究極の目標と成仏への道

大乗仏教において、「往生（おうじょう）」は、成仏（悟りを開くこと）を目指すための重要な概念です。釈迦牟尼仏の入滅後、どのようにして仏の教えに導かれ、成仏の確実な保証を得られるのかという問いに答えるものとして、古来より深く探求されてきました。

一般的に「往生」といえば、阿弥陀仏が支配する極楽浄土への往生を指し、「極楽往生」と呼ばれます。これは、死後に極楽浄土に生まれ変わることを意味します。「往」は極楽浄土へ行くことであり、「生」はそこで新たな生命を得ること、つまり「化生（けしょう）」です。この化生は、特に「蓮華化生」として表現され、蓮の花の中から生まれる様子を鮮やかに描きます。

生きものの生まれ方：四生と化生

生きものの誕生には、仏教では「四生（ししょう）」という分類があります。

1. 胎生（たいしょう）： 人間や動物のように、母親の胎内で育ち、生まれる方法。
2. 卵生（らんしょう）： 鳥類のように、卵から生まれる方法。
3. 湿生（しっしょう）： 虫のように、湿った場所から生まれる方法。
4. 化生（けしょう）： 過去の業（ごう）の力によって、形作られて生まれる方法。天人などがこれに当たります。

極楽往生における「化生」は、過去の善行や阿弥陀仏への信仰という業の力によって、極楽浄土の蓮の花の中に生まれることを意味します。

往生の本来の意味：成仏への道

往生の本来の意味は、単に極楽浄土へ行くことではありません。それは、仏の国へ行き、そこで仏となり、悟りを開くことにあるのです。したがって、往生の本質は、仏となる過程そのものなのです。

仏国土への往生：成仏への必然性

なぜ仏国土への往生が成仏への有効な手段となるのでしょうか？それは、成仏には仏の導きと、成仏の保証（授記）が不可欠だからです。大乗仏教では、仏の導きと保証のない独自の修行では、阿羅漢（あらかん）や辟支仏（びゃくしぶつ）にはなれても、二度と仏にはなれないと考えていました。

仏教の悟りとは、無我の証得です。自己の空無を悟るには、「自らが」という立場を捨てる必要があります。自我意識が残る限り成仏は不可能であり、その自我意識の払拭は自己だけでは不可能です。そのため、成仏には仏との出会い（逢仏）、仏の姿を見ること（見仏）が不可欠とされるのです。これが、浄土門の立場です。

往生の一般化：死後の世界と成仏

一般的に「往生」は、死後に仏の国に生まれることを意味します。往生する世界が仏の世界であり、そこに生まれることは成仏することと等しくなるためです。

このことから、「往生」は「仏になること」と同義語として理解されるようになり、死後の成仏という考え方が広まりました。特に、老衰による自然死は「大往生」と呼ばれ、尊ばれることが多いです。

さらに、意味が俗化し、「身のおきどころがなく、追い詰められた状態」を「往生する」という表現も生まれました。

関連用語

立ち往生（たちおうじょう）： 弁慶の立ち往生など、進むことも戻ることもできない状態を指す。
往生要集： 平安時代の僧侶、源信による往生に関する仏教論書。

参考文献

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関連項目

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外部リンク

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