征韓論

征韓論とその背景

征韓論（せいかんろん）は、日本の幕末から明治初期にかけて盛り上がった朝鮮への侵略論を指します。この論は、特に1873年（明治6年）における対朝鮮論が有名です。明治維新を果たした日本の新政府は、朝鮮政府に対して国交樹立を通告しましたが、朝鮮側はその通告の格式を理由に受理を拒否しました。この出来事を受け、日本国内では朝鮮を征伐しなければならないという議論が生じ、その結果として「征韓論」という考え方が提唱されることになりました。

朝鮮との摩擦

1868年、日本政府は朝鮮に対する通告書を送付しましたが、朝鮮側の拒絶により関係は悪化。その後、1873年の政変を経て、国内での朝鮮出兵を巡る意見の対立が顕在化しました。特に西郷隆盛や板垣退助といった権威者たちは、政権内での権力争いに巻き込まれる形で辞職を余儀なくされました。この政変は、後に「征韓論政変」と呼ばれることになります。

歴史的背景と士族の動き

実は、江戸時代後期には既に国内の国学や水戸学の一部において古代日本が朝鮮半島に対して支配権を有していたという考えが広まりつつありました。吉田松陰や勝海舟らは当時の国際関係において朝鮮に対する進出を主張していました。特に吉田松陰は「朝鮮・満州・支那を占有し、交易の利益を得るべきだ」といった主張をしていました。

そして、さらに幕末においては、朝鮮への進出論が政治的主張としても利用され、実際に武力行使の可能性もありました。特に対馬藩では、武力行使を辞さないという姿勢が見られました。

日本の外交活動とその反応

1866年には「征韓論」という記事が発表されたことで、日清関係や日朝関係は緊張を高めました。一方、朝鮮では国王高宗の父、大院君が政治を層主となっており、鎖国政策と攘夷の方針を採っていました。こうした緊迫した状況の中、明治維新が起こり、日本は新政府成立を告げる交渉を試みました。しかし、この外交文書が過去の形式と異なっていたため、朝鮮側は受理を拒否しました。

その後の1870年2月、明治政府は派遣団を朝鮮に送ったものの、朝鮮はその要求を無視。射程圏内にあった日本は次第に征韓論を後押しする声を強めていきます。特に日本国内では政権に強い影響を持つ西郷隆盛らが関与し、さらに朝鮮の反日感情が高まる中、この論が加速されていくことになります。

政治のねじれと政変

1873年、この政変が激化し、議論は宙に浮く結果に。西郷は直ちに使節を派遣するべきだと主張しましたが、大久保利通や岩倉具視らは内政の重視を唱え、極力朝鮮問題への指示を抑制しようとしました。こうして、多くの参議が辞職を余儀なくされ、政権は大きく揺らいでいきます。

その後、日本政府は「中止」と発表したものの、征韓論の火種は消えていませんでした。明治7年には台湾出兵を果たし、1875年には朝鮮へ軍艦を派遣して武力衝突が発生する事態に発展しました。

研究と評価

征韓論については、これまで多くの議論が交わされてきました。特に西郷隆盛の立場や、前後の政治状況がどのように影響を与えたかといった点は、様々な見解が存在します。1970年代以降、さまざまな研究が進んでおり、西郷の真意が問われ、その正当性が再検討されています。

このように、征韓論は単なる侵略論ではなく、当時の日本の国内外の複雑な事情を反映した重要な歴史的な論争となっています。

もう一度検索