後宮俊夫

後宮 俊夫

後宮 俊夫（うしろく としお）は、日本の海軍軍人、後に日本基督教団の牧師として活躍した人物です。1922年（大正11年）4月12日に生を受け、2018年（平成30年）12月23日に96歳でその生涯を終えました。最終階級は海軍大尉。

海軍士官としての青春

陸軍中佐であった父・後宮太朗の長男として、和歌山県和歌山市に生まれました。神戸第一中学校在学中に海軍兵学校への道を志し、入学。1941年には70期生として卒業を果たします。卒業後は連合艦隊に配属され、戦艦「霧島」に乗艦。太平洋戦争中の1942年にはソロモン海戦で負傷するという経験をします。その後も戦艦「山城」、駆逐艦「霜月」での勤務を続けましたが、1944年9月からは結核のため長期療養に入り、海軍大尉として終戦を迎えることとなりました。

戦後の転換点と信仰へ

終戦後、後宮は伊勢にて真珠養殖事業に従事します。この頃、キリスト者であった母からの勧めもあり、牧師・榎本保郎が導く世光教会に足を運ぶようになります。軍人から工員へと転じていた父親が自ら命を絶った出来事を機に、借家を出て教会内の榎本家と一つ屋根の下で暮らすことになりました。この共同生活を通じて、榎本牧師の人となりや信仰に強く惹きつけられ、キリスト教への関心を深めます。そして、後にW.Q.マックナイト宣教師から洗礼を受け、キリスト者としての歩みを始めました。洗礼を受けた後は、榎本が運営する保育園や教会の働きを積極的に手伝いました。

牧師としての道

戦後、政府から海上自衛隊への入隊要請があったとされますが、後宮はこの道を辞退します。代わりに、京都府の大住（現在の京田辺市）において、農村地域での伝道活動に身を投じることを決意しました。この時期に、師事していた榎本保郎牧師の妹である松代さんと結婚しています。1960年には日本基督教団の補教師試験に合格し、正式に牧師として任を受けます。大住世光教会での牧会を経て、後には榎本牧師の後任として世光教会で長く牧会活動を行いました。

教団総会議長として

1978年から1988年までの10年間、日本基督教団の最高指導者である総会議長を務めました。この在任中、特に歴史的な出来事として知られるのが、1984年に行われたホーリネス弾圧事件に対する謝罪です。戦時中、教団当局がホーリネス系の教会とその関係者に対して行った弾圧とその対応について、その過ちを公式に認め、関係者とその家族を教団総会に招き、教団を代表して深い謝罪の意を表明しました。

晩年とその他の活動

教団での重責を終えた後も、社会福祉法人「近江ちいろば会」の理事や、学校法人「敬和学園」の理事長など、様々な分野でその経験と指導力を活かしました。最晩年まで伝道への情熱は衰えず、滋賀県にある甲西伝道所の牧師としても活動を続けました。2018年12月23日、老衰のため96歳で安らかに永眠しました。

著作・親族

自伝として『み手のうちに - 激動の時代を生き抜いた八十年』（日本キリスト教団出版局、2002年）を著しています。

親族には、息子の後宮敬爾（霊南坂教会9代目牧師）や、孫の後宮嗣（世光教会伝道師、実業家）がいます。また、父の従兄弟にあたる陸軍大将の後宮淳、義兄にあたる牧師の榎本保郎など、近代日本の様々な分野で活躍した人物がいます。

後宮敬爾（息子、牧師）
後宮嗣（孫、伝道師、実業家）
後宮淳（父の従兄弟、陸軍大将）
後宮信太朗（親戚、実業家）
榎本保郎（義兄、牧師）
榎本栄次（義弟、牧師）
榎本てる子（義姪、牧師、実践神学者）
中道基夫（義甥、牧師、神学者、関西学院第18代院長）

参考文献

* 榎本保郎著『ちいろば』（聖燈社、1968年）

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