得能文

得能文（とくのう ぶん）

生涯

得能文は、1866年（慶応2年）に越中国（現在の富山県）で生まれました。1892年に東京大学文科大学哲学科選科を修了後、教育者としての道を歩み始めます。第四高等学校、東洋大学、日本大学、東京帝国大学で講師を務めた後、東京高等師範学校の教授に就任しました。1927年に定年退職するまで、教育の現場で多くの学生を育てました。

思想と業績

得能文は、多岐にわたる哲学分野に精通しており、その思想は、実存主義的な側面も持ち合わせていると評されています。また、教育者として、哲学の普及に尽力し、多くの著作を通じて、その思想を広く社会に伝えました。

主な著書には、上杉謙信を題材とした『上杉謙信』（1898年）、自身の哲学観をまとめた『最究竟者』（1927年）、『哲学講話』（1930年）、『哲学概論』（1933年）などがあります。また、晩年には『さびしき心』（1941年）を著し、内面的な思索を深めていた様子がうかがえます。さらに、翻訳にも携わり、ルドルフ・オイケンの『精神生活の哲学』などを翻訳しました。これらの業績は、得能文の哲学者としての多才さを示しています。

人物

得能文は、思索家であると同時に、教育者としても情熱を注いだ人物でした。その教育への姿勢は、著作や教え子たちの回想からも伺い知ることができます。また、その著作からは、真理の追求に対する強い意志と、人間存在に対する深い洞察が感じられます。

晩年

得能文は、1945年（昭和20年）に生涯を閉じました。その思想は、今日においてもなお、多くの人々に影響を与え続けています。没後も、著作は版を重ね、哲学の古典として読み継がれています。

著書一覧

『上杉謙信』裳華房、1898年
『最究竟者』大村書店、1927年
『現今の哲学問題』第一書房、1928年
『浅人零語』第一書房、1928年
『哲学講話』第一書房、1930年
『高等教育哲学概説』東洋図書、1932年（高階順治共著）
『哲学概論』第一書房、1933年
『感想と回顧沈黙の疑問』第一書房、1935年
『現代中等修身教授必携』東京開成館、1935年
『真理の追求』第一書房、1935年
『哲学汎論』中和会事務所、1935年
『現代中等修身実業学校用教授必携』東京開成館、1938年
『人生読本 春夏秋冬』第一書房、1938年（今哲朗編）
『さびしき心』第一書房、1941年
『生活と哲学 現今の哲学問題』第二書房、1949年

翻訳

オイケン『精神生活の哲学』弘道館、1913年
『仏説四十二章経・仏遺教経』訳註 岩波文庫、1936年

記念論集

『哲学論文集 得能博士還暦記念』岩波書店、1927年（田辺重三等編）

参考資料

『日本近代文学大事典』講談社、1984年

関連項目

境野事件

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