越中国

越中国：富山県の歴史を彩る令制国

越中国（えっちゅうのくに）は、古代日本の地方行政区分である令制国の一つです。現在の富山県全域をほぼ含む地域を指し、北陸道に属していました。その歴史は古く、5世紀頃には伊彌頭国造・利波氏や鳥取部氏などの地域勢力の領域が存在していました。7世紀末には、越国（高志国）の分割により、越前国、越中国、越後国の前身となる行政区分が成立したと考えられています。

大宝律令の施行（701年～702年）によって、越中国は正式な令制国として成立しました。当初は頸城郡、古志郡、魚沼郡、蒲原郡の4郡を含んでいましたが、702年3月17日には、これらの郡は越後国に編入されました。その後、越中国は礪波郡、射水郡、婦負郡、新川郡の4郡で構成されることになります。

718年には越前国から能登国が分立しましたが、741年には越中国に併合され、757年に再び独立しました。746年には、著名な歌人である大伴家持が越中国の国司として赴任し、多くの歌を万葉集に残しています。758年には駅鈴が設置され、775年には大小目員が設置、804年には上国に定められました。

越中国には大きな勢力は存在せず、多くの豪族や国人が散在していました。彼らは時代の流れに応じて、木曾義仲や北条氏、守護名越氏、桃井直常といった勢力と連携し、活躍しました。

室町・戦国時代の越中

室町時代には、桃井氏や斯波氏との争いを制した畠山氏が守護職を掌握し、守護大名となりました。しかし、畠山氏は京に滞在することが多く、実際の統治は神保氏などの守護代に委ねられていました。明応の政変では、神保長誠が将軍足利義材を富山に迎え、放生津幕府を樹立しました。この時代、浄土真宗が広まり、一向一揆も頻発しました。

戦国時代に入ると、守護畠山氏は神保氏と対立し、能登畠山氏を頼るようになりますが、畿内での内紛激化により勢力を失いました。その隙を突いて神保氏をはじめとする畠山氏の被官が台頭します。特に、新川郡の守護代椎名氏と、射水郡・婦負郡の守護代神保氏の間で激しい抗争（越中大乱）が勃発しました。

永禄2年（1559年）から永禄11年（1568年）にかけての越中大乱は、武田信玄を支持する神保長職と、上杉謙信を支持する椎名康胤による代理戦争の様相を呈しました。永禄11年以降、上杉謙信は越中制圧に乗り出しますが、武田氏の支援を受けた越中豪族や一向一揆の抵抗に遭いました。天正4年（1576年）、上杉謙信は増山城や森寺城を落城させ、越中を制圧しますが、天正10年（1582年）には織田氏の北陸侵攻が始まり、魚津城の戦いの後、上杉氏の勢力は駆逐されました。

安土桃山時代以降

本能寺の変後、柴田勝家の支援を受けた佐々成政が越中を統一しましたが、勝家が羽柴秀吉に敗れると、成政は秀吉に服従せず、前田利家と対立しました。秀吉による富山合戦で敗れた成政は、新川郡のみを領有するにとどまり、残りの地域は前田氏に与えられました。1595年には、前田利長に新川郡も加増され、青山吉次が上杉家の越中衆（土肥氏、柿崎氏、舟見氏など）から諸城を受け継ぎました。

江戸時代初期には土方氏の布市藩が存在しましたが、能登国内の領地との交換により、越中全域が前田氏の領地となりました。富山藩（婦負郡と新川郡の一部）が加賀藩の支藩として設置されましたが、越中国の大半は加賀藩領でした。その後、廃藩置県まで、大きな変化なく続きました。

明治時代以降は、廃藩置県、府県統合などにより、越中国の地域は現在の富山県に統合されています。

越中国の主要施設

国府：射水郡に置かれ、現在の高岡市伏木古国府にあたると考えられています。勝興寺の周辺や、伏木気象資料館（旧伏木測候所）の敷地が国府跡や国司館跡として推測されています。

国分寺・国分尼寺：国分寺は現在の高岡市伏木一宮にあり、気多神社の近くに残る「国分寺跡」に薬師堂が建立されています。国分尼寺は、現時点では遺構が発見されていません。

神社：越中国には多くの神社があり、『延喜式神名帳』には大社1社、小社32社の計33社が記載されています。一宮については、射水神社、気多神社、高瀬神社、雄山神社の4社が挙げられています。これらの神社は、それぞれの時代に勢力を誇り、一宮の称号を争ってきた歴史があります。

主要人物

越中国の歴史には、多くの国司、守護、そして戦国武将たちが関わってきました。大伴家持をはじめとする国司たちの功績、畠山氏や神保氏、椎名氏といった守護大名や武将たちの活躍は、越中国の歴史を彩る重要な要素となっています。

まとめ

越中国は、古代から近世にかけて、政治、文化、軍事など様々な面で重要な役割を果たした地域です。その歴史は複雑で多様であり、現代の富山県の礎を築いたと言えるでしょう。この記述が、越中国の歴史への理解を深める一助となれば幸いです。

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