得能正通

得能正通（とくのうまさみち）について

得能正通は、1867年に現在の広島県福山市神辺町湯野村で生まれました。本名は徳永であり、のちに得能に改姓し名を正通としました。明治から昭和初期にかけて、郷土史家としての活動や養兎事業の振興、地域の商工業の発展に大きく貢献しました。彼はその活動を通じて、備後地方の歴史と文化を広める重要な役割を果たしました。

幼少期と学び

幼少期から学問に秀で、特に歴史や文書に興味を持っていた得能は、早くから『湯野村誌』や『松永村誌』の編集に取り組みました。彼は、村内の名所や古文書を探求し、地域の歴史を明らかにすることに情熱を注ぎました。1884年には、郷土である湯野村の歴史を記した『湯野村誌』を発行しました。この本は、彼の業績の始まりを象徴するものであり、その後の郷土史研究の礎となりました。

必然の困難

得能は、性格や能力により多くの責任を果たしてきましたが、予算執行の不始末から有罪判決を受け、約10年もの間服役することになりました。服役後は、彼の故郷や周囲の町村で各種の役職に就き、再び地域貢献を目指しました。出所後に再スタートを切るにあたり、周囲の人々から支持を受け、商工会や新聞社との関係を築き、数多くの執筆や宣伝活動に乗り出しました。

養兎事業の推進

得能は、特に兎肉の利用や養兎事業の重要性に気付き、1889年には「大日本養兎改良義会」を設立し、その会長に就任します。彼は、食生活におけるたんぱく源の一つとしての兎肉を推奨し、多くの著作を通じてその普及を進めました。『養兎真論』や『続大日本養兎史』、さらには「養兔新聞」など、養兎に関するさまざまな文献が彼の手によって生み出され、後の研究者たちへの貴重な資料となっています。

商工業への貢献

福山商工会の再興に貢献した得能は、特に地域産業の振興に力を入れました。彼は商工会の書記を務め、その後も自費で商工会報を発行しつづけたことで、地域の商業活動を活性化しました。彼の多くの論文や意見は、地域のビジネス環境を改善するための指針として受け入れられました。商工業の発展に寄与するだけでなく、地元の人々に希望を与える存在でもありました。

郷土史の研究

得能はまた、備後地方の郷土史の執筆に多大な影響を与えました。彼は「備後郷土史会」を設立し、月刊誌『備後史談』を通じてその研究を促進しました。彼が手掛けた許多の地誌は、今なお地域の歴史の一端を支える貴重な資料となっており、地元への愛情と誇りを示す証と言えるでしょう。

晩年と死

1930年には養兎事業の重要性を訴えるために、養兎神社を自ら建立しました。1950年に亡くなるまで、得能は地域の商工業、養兎事業、郷土史研究に専念し、その功績は後世に語り継がれています。彼の尽力は、地元の人々に多くの影響を与え、福山の地域振興の歴史に強く刻まれました。得能正通は、84歳でその生涯を閉じましたが、彼の活動は現在でも多くの人々によって評価されています。彼の業績は、福山地域の歴史的な基盤を形成する一環となり、今なお人々の記憶に残っています。

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