御所川原

御所川原（ごしょがわら）

青森県五所川原市でのみ栽培されている、希少なリンゴの品種、それが「御所川原」です。鮮やかな赤色の果肉と強い酸味が特徴で、加工用としてジュースやジャムなどに利用されています。近年では、同じく果肉が赤くなる「栄紅」「レッドキュー」と共に、「赤～いりんご」として五所川原市の特産ブランド化が進められています。

特徴

一般的なリンゴの花は白色ですが、御所川原は紅色をしています。若葉や枝も赤みを帯びているのが特徴です。自家結実率が比較的高いのも栽培上の利点です。収穫時期は9月下旬頃で、中生種に分類されます。

果実は小型で、重さは150～200グラム程度。長円錐形で、果柄が長いのが特徴です。果皮は黄色をベースに赤く色づき、果肉は特に周縁部がアントシアニンによって赤くなります。果肉はやや粗く硬めで、甘味の中に強い酸味と渋みがあります。貯蔵性は比較的良好です。

起源

御所川原のルーツは、梅沢村（現在の五所川原市梅田）の村長を務めた育種家、前田顕三氏に遡ります。前田氏は1939年（昭和14年）から20数年をかけて果肉が赤いリンゴを複数系統作出しましたが、品種登録前に亡くなってしまいました。その後、孫の前田榮司氏が意志を受け継ぎ、さらに青森県五所川原市が3系統を譲り受け、選抜を重ねて育成しました。特徴が安定していることを確認し、1993年（平成5年）に種苗法に基づく品種登録を出願、1996年（平成8年）に「御所川原」として正式に登録されました（第5077号）。

特筆すべきは、御所川原が五所川原市域以外での育成が禁じられている点です。地域に根ざした品種であることが伺えます。2016年以降、苗木の育成・管理は、株式会社アグリコミュニケーションズ津軽に委託されています。

利用

御所川原はその強い酸味から、主に加工用として利用されています。ジュース、ワイン、ジャム、洋菓子、花茶など、様々な商品が開発・販売されています。五所川原商工会議所は、御所川原をはじめとする五所川原市特産の果肉が赤いリンゴ品種を「赤～いりんご」としてブランド化し、全国展開を図っています。中小企業庁の平成20年度「地域資源∞全国展開プロジェクト」にも採択され、健康食品、化粧水などの美容関連商品、赤いシードルなど、新たな商品開発が支援されています。

五所川原市一ツ谷地区には、水路沿いの約1キロメートルに渡って約300本の御所川原が植えられており、「赤～いりんごの並木道」として観光名所にもなっています。

派生品種

御所川原を種子親、王林を花粉親として交配された「栄紅（えいこう）」は、2016年に品種登録されました。栄紅は、果肉が赤く、さっぱりとした甘さと王林のような芳香が特徴です。収穫時期は10月下旬から11月上旬と晩生です。

同じく御所川原を種子親、金星を花粉親として交配された「レッドキュー」は、2018年に品種登録されました。収穫期が9月上旬から中旬と早く、収穫直後の渋みが少ないのが特徴です。

御所川原は、その独特な風味と地域性から、五所川原市を代表する特産品として、今後も様々な展開が期待されるリンゴです。

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