御手洗毅

御手洗毅：キヤノンの礎を築いた医師実業家

御手洗毅（みたらい たけし、1901年3月11日-1984年10月12日）は、日本の実業家であり、医師でもありました。キヤノン株式会社の創業者にして初代社長として、その名を歴史に刻んでいます。

医学と経営の両立

1901年、大分県に代々医師の家系に生まれました。佐伯中学（現大分県立佐伯鶴城高等学校）を経て北海道大学予科に進学、恵迪寮の委員長を務めた後、1928年に北海道大学医学部を卒業。上京して日本赤十字病院に勤務し、のちに御手洗産婦人科病院を開業しました。同時期には、後に731部隊で知られる石井四郎と師事関係にあったことも記録に残っています。

キヤノンの創業と発展

1933年、御手洗は精機光学研究所（後のキヤノン）に共同経営者として参画します。これは、産婦人科医として関わった患者の夫、内田三郎との出会いがきっかけでした。内田氏のシンガポール赴任などを経て、1942年には御手洗自身が社長に就任。太平洋戦争による空襲で自身の病院を失うも、戦後はキヤノンの経営に専念しました。医師としての経験を生かし、医療機器開発を推進。これがキヤノンの発展の原点となりました。

1967年には「右手にカメラ、左手に事務機」のスローガンを掲げ、キヤノンの多角経営を宣言。企業の多様化を成功に導きました。1974年に社長職を前田武男氏に譲り、1977年には名誉会長に就任。1984年、83歳でその生涯を閉じました。

独自の経営哲学

御手洗の経営哲学は「実力主義と家族主義」を旨としていました。1959年には「GHQ（Go Home Quickly）」を逆手に取った標語を掲げるなど、当時としては珍しい社員を大切にする考え方を積極的に取り入れました。1967年には完全週休2日制を導入するなど、社員の生活環境改善にも力を入れていました。

また、海外進出にも積極的で、キヤノンの国際展開を推進。自身の子供たちを高校からアメリカに留学させるなど、グローバルな視点を持っていました。その息子である御手洗肇氏は、マサチューセッツ工科大学に進学し、後にキヤノンの5代目社長に就任しています。

受賞歴

御手洗毅の功績は数々の賞で称えられました。

藍綬褒章（1962年）
総理大臣賞（1964年）
勲二等瑞宝章（1971年）
第2回毎日経済人賞（1980年）

御手洗毅は、医師としての経験と、先見の明に富んだ経営手腕で、キヤノンを世界的な企業へと成長させました。彼の生涯は、日本の経済発展と社会変革を象徴する物語と言えるでしょう。その経営哲学は、現代の企業経営にとっても重要な示唆を与え続けています。彼の甥には、後にキヤノン社長、日本経済団体連合会会長を務めた御手洗冨士夫氏がいます。

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