復氷

復氷：圧力と氷の不思議な関係

復氷とは、特定の物質に圧力を加えると融解し、圧力が解放されると再び凍結する現象です。この興味深い現象は、19世紀の科学者マイケル・ファラデーによって発見されました。

復氷は、水のように凍結時に体積が増加する物質で観察されます。このような物質では、外部圧力の増加に伴って融点が低下するという性質があります。水の融点は、圧力が1気圧増加するごとに約0.0072℃低下します。そのため、例えば-4℃の氷に500気圧の圧力を加えると、融解が始まるのです。

この現象は、簡単な実験で確認できます。氷に細いワイヤーをかけ、重りを吊り下げると、ワイヤーの部分の氷が圧力によって融解し、ワイヤーが氷を貫通します。しかし、ワイヤーが通過した後、圧力が解放されると、融解した氷は再び凍結し、氷塊は元の状態に戻ります。この実験は復氷の分かりやすい例示ですが、ワイヤーが氷を通り抜ける詳細なメカニズムは複雑です。

表面融解：氷の表面の特殊な状態

融点よりもはるかに低い温度の氷であっても、表面付近の分子は特殊な状態にあります。これは「表面融解」と呼ばれ、氷の表面に液体のような層が形成されていることを示唆する研究結果が数多くあります。核磁気共鳴法や原子間力顕微鏡を用いた実験により、この表面液体層の存在が確認され、その厚さは温度に依存することが分かっています。例えば、-1℃では約32nm、-10℃では約11nmという測定結果があります。

表面融解は、氷の低摩擦係数、圧縮しやすさ、高い接着性といった性質を説明する上で重要な要素と考えられています。

復氷の自然現象における例：氷河の移動

氷河は、その巨大な重さによって下面に大きな圧力を加えます。この圧力によって氷河の底面が融解し、氷河が移動できるのです。高地から低地へと移動する氷河は、空気の温度が水の凝固点を超える低い標高で、融解した水が流れ出すこともあります。

よくある誤解：アイススケートと雪玉

アイススケートや雪玉作りは、しばしば復氷の例として挙げられますが、これは正確ではありません。スケートにおける圧力は、スケーターの体重だけでは不十分であり、復氷に必要な圧力にははるかに及びません。また、復氷は氷点下でのアイススケートを説明するものでもありません。雪玉作成に関しても同様で、手で加えられる圧力では復氷を起こすには不十分です。

最近の研究成果：超固体スキンと水素結合

近年、水や氷の表面には弾力性があり、疎水性で熱的に安定した「超固体スキン」が存在することが明らかになりつつあります。このスキンは、氷の表面を滑りやすくし、氷と水の相互作用に影響を与えていると考えられています。さらに、圧力下での水素結合の緩和に関する研究も進展しており、圧力によって水素結合の性質が変化し、融点が低下するメカニズムが解明されつつあります。

これらの研究成果は、復氷現象の理解を深め、氷の性質や挙動に関する新たな知見をもたらしています。今後、さらに詳細な研究が進むことで、復氷現象の全貌が明らかになることが期待されます。

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