微熱少年

微熱少年

『微熱少年』は、松本隆のエッセイ集と小説、またそれを原作にした映画から成る多面的な作品です。特に、青春の微妙な感情や葛藤を捉えた内容が評価されています。

エッセイ集

1975年1月1日、ブロンズ社から「エッセイ集 微熱少年」として出版されました。2006年には立東舎文庫から文庫版が発売されました。このエッセイ集では、松本自身が歌謡曲についての考察、またプロデューサーとしての経験に基づくレコーディングの様子、リズムに関する理論などを綴っています。また、“恋歌”の歌詞が20編収録されており、ますむらひろしによるイラストとのコラボレーション“春街スケッチ”では、その瑞々しい情景が新たな視点を提供しています。文庫版の帯には吉田拓郎からの推薦文が寄せられ、松本の作品の広がりを感じさせます。

小説

1985年11月1日には、新潮社より小説版が発表され、同年にはSONYからカセットブックがリリースされました。この作品は、松本が感じていた「熱血少年ではないが、冷めているわけでもない微熱を秘めた少年時代」の思い出を基にした自伝的な作品です。1987年には松本自らが監督した映画版が公開され、この小説の持つ独特の視点や雰囲気を映像化しました。また、小説と映画ではエンディングや物語の設定が多少異なっています。

あらすじ

物語は、ビートルズが来日した年、何かが変わる予感を抱く少年健の視点で語られます。新しい音楽に触れ、もどかしい恋愛を経験しながら、大人になる不安に直面しています。健は「微熱」を感じながら成長していく青春を象徴するキャラクターであり、彼の葛藤や喜びは、若い世代の共感を呼び起こします。

映画

映画版は1987年6月13日に公開され、松本が監督、原作、音楽を手掛けました。主演には斉藤隆治が選ばれ、エリー役には新進女優の西山由美がキャスティングされました。また、劇中には松本と音楽的なつながりのある多くのミュージシャンが出演しており、吉田拓郎や財津和夫らが脇を固めています。音楽面でも松本が作詞した曲が多く、作品に深い印象を与えています。

キャストとスタッフ

主要キャストとして他に、広田恵子、関口誠人、長畠善次などが参加し、豪華な顔ぶれが話題となりました。制作スタッフには、監督の松本隆を始め、プロデューサーの堀威夫、脚本の筒井ともみなどが名を連ねています。

サウンドトラック

映画のサウンドトラックも注目の一つで、REBECCAの「MONOTONE BOY」をはじめとする多彩な楽曲が収録されています。これらの楽曲は映画の雰囲気を一層引き立て、聴く者に強い印象を残します。

映像作品とロケ地

また、ポニーキャニオンからは1987年に映像作品がリリースされており、メイキングやロケ地情報なども収録されています。東京タワーや日本武道館、神奈川の長者ヶ崎などが撮影地として利用され、それぞれの場所が物語に新しい息吹を加えています。

このように『微熱少年』は、松本隆の幅広い才能を感じさせる多面的な作品であり、視覚、聴覚、文芸という異なる形で多くの人々に影響を与え続けています。

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