徳川誠

徳川誠：慶喜の血を引く異色の実業家と貴族院議員

徳川誠は、日本の近代史において特筆すべき存在感を放つ人物です。江戸幕府最後の将軍、徳川慶喜の九男として誕生しながら、華族としての道を歩まず、実業界で活躍し、やがて貴族院議員の地位にまで上り詰めたその生涯は、激動の時代を生き抜いた稀有な物語です。

生い立ちと教育

1887年（明治20年）、徳川慶喜と側室・中根幸の子として誕生した徳川誠は、幼少期を指物商の小長井勝次郎のもとで里子として過ごしました。幼少期のエピソードとして、里子から戻った際に慶喜を町方言葉で「チャン」と呼んだ逸話は、周囲を慌てさせたという記録が残っています。

その後、姉と共に静岡高等小学校付属幼稚園に入園し、東京の学習院へと進学しました。1908年（明治41年）、学習院中等科を卒業すると、アメリカ合衆国ミシガン州のホープ・カレッジに留学するなど、グローバルな視野を養いました。帰国後、養子縁組を経て分家し、独立した家計を築いています。

実業界での活躍と政治家としてのキャリア

帰国後、徳川誠は横浜正金銀行に入行し、アメリカやフランスの支店に勤務しました。国際的な金融機関での経験は、彼の視野を広げ、実務能力を磨く上で大きな役割を果たしたと言えるでしょう。大正9年（1920年）に横浜正金銀行を退職すると、浅野セメント株式会社の監査役に就任。実業界での手腕を発揮しました。

大正2年（1913年）、男爵の爵位を授与された徳川誠は、昭和21年（1946年）には貴族院男爵議員補欠選挙で貴族院議員に選出されました。貴族院では公正会に所属し、貴族院廃止となる昭和22年（1947年）まで議員としての職務を全うしました。

家族と晩年

徳川誠の私生活は、華族の伝統と近代的な価値観が交錯するものでした。妻は男爵名和長憲の娘・霽子で、二人の間には長男・熙と次男・脩が誕生しました。長男・熙は海軍少佐として太平洋戦争で戦死するという悲劇に見舞われます。一方、次男・脩は日本銀行に勤務し、子孫も残しています。

徳川誠は1968年（昭和43年）に71歳で生涯を閉じました。彼の墓は、谷中霊園の寛永寺墓地にあります。

まとめ

徳川誠は、華族の出自を持ちながら、実業界と政界で成功を収めた稀有な存在でした。その生涯は、激動の時代を生き抜いた彼の強靭な精神と、時代への適応能力を物語っています。彼の存在は、近代日本の歴史を理解する上で重要な視点を提供してくれるでしょう。 徳川慶喜の子孫として、また、実業家・政治家として、彼の功績は日本の歴史に刻まれています。 彼の波乱に満ちた人生は、現代においても学ぶべき点が多く残されています。彼の功績は、単なる家柄の背景を越えた、実力と努力の賜物であったと言えるでしょう。

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