心筋

心筋とその機能

心筋（しんきん、英: cardiac muscle）は、心臓の主要な組織であり、心臓の収縮と弛緩を担う重要な役割を果たします。心筋は骨格筋と同じ横紋筋に分類されますが、その構成や機能には多くの違いがあります。具体的には、心筋は不随意筋であり、体の意志に反して自動的に動きます。また、心筋細胞は主に単核ですが、成人のヒトの心筋細胞の70%が単核細胞であり、30%が2核細胞となっています。さらに、異なる生物種間での心筋細胞の構成に違いが見られ、マウスでは80%以上が2核心筋細胞であるのに対し、ゼブラフィッシュでは99%以上が単核となっています。これは心筋細胞の成長過程や環境に応じて、細胞分裂の仕方が異なるためです。

自律的な活動とエネルギー供給

心筋細胞は、自発的に脱分極する特性を持ち、一定の間隔で収縮と弛緩を繰り返します。心筋の電気的活動を支える構造として、Z線近くに陥入した横管系があります。この横管系は筋形質小胞体と連携して機能し、心筋細胞内の電気的信号の伝導を助けます。

心筋細胞の内部には、エネルギー供給に必要なミトコンドリアやグリコーゲン顆粒が豊富に存在しており、これは心臓が持続的に収縮を行うために不可欠です。このような高いエネルギー需要に応えるために、心筋細胞はエネルギーを効率的に生成できるように進化しています。

心筋の特殊化

心筋には、特化した細胞も存在します。心房には、血圧と血流を調整する機能があり、心房性ナトリウム利尿ペプチド（ANP）と呼ばれるホルモンを合成、分泌する心房筋内分泌細胞が含まれています。これにより、血管を弛緩させることができます。また、心筋の特別な構造の一つに、電気的興奮の信号を伝える特殊心筋があります。これは、心臓の収縮と弛緩のリズムを同期させる上で不可欠な役割を果たしており、心筋の機能の調整に寄与しています。

心筋の顕微解剖と特徴

心筋の顕微解剖を光学顕微鏡で観察すると、横紋が見られ、低倍率で網状の構造が確認できます。まれに、心筋細胞の辺縁に黄褐色の顆粒構造が認められますが、これはリポフスチン顆粒と呼ばれる老廃物であり、心筋が安定した組織であるために生成され、排泄されないものです。

心筋線維同士は介在板によって結ばれ、心筋の結合を保っています。静止状態にある心筋線維は、細胞外に対して-50〜-90mVの膜電位を持ち、これは心筋が独自の電気的性質を持つ理由の一つです。心筋の絶対不応期は200msと、骨格筋の1〜3msに比べて非常に長く、この特徴が心臓の持続的な拍動に寄与しています。

以上のように、心筋はその特殊化した構造と機能により、心臓のパフォーマンスを支える重要な役割を果たしています。

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