心臓血管外科学

心臓血管外科学

心臓血管外科学（しんぞうけっかんげかがく）は、心臓および血管に関連するさまざまな疾患を外科的に治療する専門分野です。この領域は、心臓疾患を扱う心臓外科学と血管疾患を扱う血管外科学に分かれていますが、日本ではこれら両方を統合した形で展開されています。ここでは、心臓血管外科学の歴史、手術法、対象疾患、及び周術期管理について詳細に解説したいと思います。

心臓外科の歴史

心臓外科学の始まりは19世紀に遡ります。当時の外科医たちは心膜縫合術などの手術を行い、心臓やその周辺の疾患に取り組んでいました。1895年にノルウェーの外科医アクセル・カペレンは、心臓に対する最初の手術を行い、これが心臓外科学の創始とされています。さらに1896年にはドイツのルートヴィッヒ・レーンが初の合併症のない心臓手術を達成しました。これらの工夫や取り組みが今日の開心術の発展へと繋がります。

開心術の発展

第二次世界大戦後、心臓の手術は大きく進展しました。1952年、トロント大学の心臓外科医ウィルフレッド・G・ビゲローが全身低体温法を導入し、その後、世界初の人工心肺を使った体外循環が実現します。これにより、複雑な心内修復術が可能となり、心臓手術の可能性が広がりました。1990年代からは、人工心肺を使用しない心拍動下の冠動脈バイパス術（CABG）が行われるようになり、より高い安全性が求められる手術が実施されています。

血管外科の歴史

血管外科は、動脈や静脈に関わる疾患に特化した分野で、心臓外科と一般外科の技術を基に発展しました。血管吻合法の基礎を築いたアレクシス・カレルや、低侵襲手術の技術を開発した医師たちの努力が血管外科の進化を助けています。血管外科の専門知識は心臓を除く全身血管に及び、脳動脈瘤などは脳神経外科の範疇となります。

対象疾患

心臓血管外科学で扱われる疾患は多岐にわたり、弁膜疾患、冠動脈疾患、心不全、そして先天性心疾患などがあります。各疾患に適した手術法や治療法が確立され、患者に対する適切な治療が提供されています。

代表的な術式

心臓血管外科学では、弁膜症に対する弁置換術や、冠動脈バイパス術など、様々な手術が実施されます。また、心不全に対する心移植や補助人工心臓装着術、大動脈の手術なども重要な手術術式となっています。

周術期管理

手術の成功は周術期の管理に大きく依存します。術前には徹底した検査が行われ、術中は呼吸器系と循環器系の両方を注意深くモニタリングします。術後はICUでの厳密な観察が欠かせず、出血や循環サポートが必要とされる場合には迅速な対応が求められます。

専門医制度

日本における心臓血管外科医の育成は、専門医制度によって支えられています。心臓血管外科専門医の資格取得には、幅広い経験が必要です。専門医資格を持つ医師がこの分野を牽引し、患者に質の高い医療を提供しています。

心臓血管外科学は、技術の進展とともに日々進化しています。治療法の多様化と専門医の育成により、心臓や血管の疾患に悩む患者にとってより良い選択肢が提供されています。

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