必殺! III 裏か表か

必殺!III 裏か表か

『必殺!III 裏か表か』は、1986年に公開された時代劇映画であり、人気テレビシリーズ『必殺仕事人V・激闘編』の後日談として位置づけられています。工藤栄一が監督を務め、松竹株式会社、朝日放送、京都映画撮影所（現・松竹撮影所）が制作を手掛けました。

キャッチコピーは「人が人を殺す だが 今は、金が人を殺す」、「神も仏も頼みにならず この世の恨みはこの世で晴らす―仕事人一同」。

概要

本作は、金融システムに支配された江戸社会を舞台に、主人公である中村主水が翻弄されながらも、そのシステムに抗っていく姿を描いています。前2作とは異なり、物語が進むにつれて、全体的に重く、暗く、そして陰惨な雰囲気が漂うのが特徴です。監督を務めた工藤栄一の意向により、テレビシリーズでは無敵であった仕事人たちが、敵の圧倒的な数に苦戦する場面が多く描かれています。壱と参は本作で命を落とし、竜は生死不明となるなど、シリーズの中でも異色の展開を見せました。

物語では、両替商・真砂屋とその背後にいる奉行所の上役たちによって、主水は次第に心身ともに追い詰められていきます。そして、自らが陥れられたことに気づいた主水は、普段の「昼行灯」のような姿をかなぐり捨て、真砂屋に殴り込みをかけます。枡屋への暴行を制止しようとする筆頭同心・田中に「てめえは黙ってろ！」と怒鳴る場面は、主水の裏の顔が顕になった象徴的なシーンであり、作品タイトルである『裏か表か』が意味する、主水の「裏の姿も表の姿も区別がつかない」状態を表現しています。

あらすじ

物語は、八丁堀同心・清原英三郎が、両替商・枡屋仙右衛門を強請っていたことが原因で謀殺されるところから始まります。清原の妻・おこうは、夫の死の真相を突き止めるため、両替商組合の肝煎である真砂屋徳次に問い詰めます。そして、夫殺しの黒幕が徳次ら両替商組合であることを知ります。

一方、主水は、清原とも関係のあったおしのから、枡屋に預けた20両の利息を取り立ててほしいと依頼されます。枡屋を訪れた主水は、清原殺しをほのめかされ、逆に脅迫されます。また、枡屋をクビになった彦松が一家心中したことを憂いた政は、主水に枡屋から墓代をふんだくるように頼みます。しかし、再び枡屋を訪れた主水の前に現れたのは、真砂屋徳次でした。能面のような表情で嘯く徳次に、主水は薄ら寒さと怒りを感じながらもその場を立ち去ります。その帰り道、主水は手練れの刺客たちに命を狙われ、真砂屋が仕掛けた罠にじわじわと追い詰められていきます。

そんな中、先代の両替商組合肝煎の娘であり、現在は店を継いだおこうは、金を牛耳る者の強さと恐ろしさを主水に説き、この件から手を引くよう忠告します。しかし、夫の仇の仲間となったおこうに、主水はその忠告を怒りのままに無視します。

やがて、真砂屋が少女の命を奪ってまで自分を罠にかけたことを知った主水の怒りは頂点に達します。最早引き返せない所まで来た主水と真砂屋の私闘は、仲間の仕事人たちを巻き込みながら、死ぬことでしか終わらない結末へと向かっていくのです。

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