忍法十番勝負

忍法十番勝負

『忍法十番勝負』は、日本の漫画界において非常に独特な作品であり、1964年から1966年にかけて秋田書店の月刊漫画雑誌『冒険王』に連載されました。この短編集は、10人の異なる漫画家がリレー形式で物語を描くという、珍しいスタイルを取っています。連載が終了してからも、数回の再編集や再出版を経て、多くの読者に親しまれています。

物語の背景と内容

物語は、1615年2月、大坂夏の陣の数ヶ月前の大阪城を舞台に、秘密の抜け穴に関する絵図面を巡る忍者同士の死闘を描いています。各話は、異なる作者による独立したストーリーとなっており、登場人物たちがそれぞれの目的を持ち、命を懸けた戦いを繰り広げます。

一番勝負（堀江卓）

夕月村を舞台に、大坂城の秘密の抜け穴の絵図面を巡る争いが始まります。村の住人である54人の大工たちは、その絵図面を守るために必死になっていますが、彼らは次第に忍者たちの嫉妬と陰謀に巻き込まれていくことになります。

二番勝負（藤子不二雄Ⓐ）

絵図面は夕月村を離れ、風来忍者の流れ星が賞金稼ぎから奪い取ります。流れ星は兄をも喪いながらも、絵図面を持ち続け、その後の運命に挑む姿が描かれています。

三番勝負（松本零士）

絵図面は大平の里に辿り着き、様々な忍者たちがそれを目指します。平和を望む忍者たちが次々に苦しむ中、若き頭首の風丸は忍者の宿命と向き合います。

四番勝負（古城武司）

絵図面を巡る裏切りや鬩ぎ合いが描かれ、味方か敵かを判断することが命取りになる状況が訪れます。忍者たちは互いに顔も知らず、冥闇の中で戦います。

五番勝負（桑田次郎）

絵図面を手にした「魔王」との苦闘が続き、若き忍者かすみ丸がその試練に立ち向かいます。

六番勝負（一峰大二）

前作のかすみ丸と同名ながら別人と思われる彼が、再び絵図面を巡る戦いに挑みます。在りし日の運命を受け継ぎ、名を馳せようとする姿が描かれます。

七番勝負（白土三平）

忍者犬万が絵図面を手にし、真田方の宿鳥が挑む場面。動物の力を借りた戦いが繰り広げられます。

八番勝負（小沢さとる）

服部半蔵の元で試行錯誤する部下たちが、秘策を巡らせる描写が特徴的です。

九番勝負（石ノ森章太郎）

物語は更に複雑化し、絵図面が再び手に渡る様子が描かれます。三者が敵味方に分かれた戦闘が繰り広げられます。

十番勝負（横山光輝）

徳川家康が最終的に絵図面と向き合い、その真相を探るために奮闘する様子がクライマックスを迎えます。

評価と影響

『忍法十番勝負』は各作家の個性が光る作品として評価され続けており、特に白土三平や横山光輝といった巨匠による貢献が際立っています。しかし、物語の整合性に欠ける部分を指摘する意見もあり、本作はその展開により多様性を持った作品として、忍者漫画の中でも特異な立ち位置を確立しています。今なお読者に愛され続けている名作です。

書誌情報

本作は秋田書店から様々な形で再版されています。サンデーコミックス版や文庫版、コンビニコミック版など多岐にわたる形式で入手可能で、多くの読者に親しまれる長寿シリーズとなっています。

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