志染川

志染川

兵庫県南部を悠然と流れる志染川は、加古川水系に属する一級河川です。この川の流れは、狭義には神戸市北区山田町下谷上で山田川と箕谷川が合流する地点から始まり、途中に広大なつくはら湖を湛え、三木市志染町で淡河川と合流した後、三木市久留美で美嚢川に注ぐまでの区間を指します。一方で、上流の山田川を含めた広義の全長は約23.2キロメートルに及びます。ここでは、山田川と箕谷川の合流点から美嚢川への合流点までを「志染川」として紹介します。

川の地理と流れ

志染川は、南方から流れ込む箕谷川と合流し名を改めてからも、神戸市北区のニュータウン群を眼下に望みつつ、次第に山間部へと分け入っていきます。北区の西端に近づくと、川の流れを堰き止めて造られた人造湖、つくはら湖が現れます。このダム湖は、三木市との境界を跨ぐ呑吐ダムまで広がります。三木市に入ると、川筋は北西へと向きを変え、北東から水量豊かな淡河川が合流してきます。ここから先は概ね西へと流れ、沿岸には水の恵みによって育まれた河岸段丘が発達し、谷あいの平地は美しい水田風景が広がっています。そして、三木市街の北東部で同じく加古川水系の美嚢川に合流し、その旅を終えます。

主な流れと支流

山田川

志染川の上流部を形成する山田川は、神戸市北区上谷上や灘区六甲山町の石楠花谷などを源流としています。流れは一時北上しますが、やがて西向きに転じます。六甲山系や帝釈山系をはじめとする周囲の山々からの多くの沢や小川を集めながら、西にあるつくはら湖へと向かいます。山田川からは、後述する淡山疏水の一部である山田川疏水が分岐しています。

淡河川

志染川水系において最大の支流である淡河川は、神戸市北区中部の金剛童子山北麓に源を発します。最初は北へ流れますが、ほどなくして西流（源流部では屏風川とも呼ばれる）となります。丹生山系の山々を源とする鳴川と合流して正式に淡河川となり、山陽自動車道や兵庫県道38号線と並行して流れます。神田川、芦谷川、地蔵谷川、石峰寺川など、様々な支流からの水を集め、北区淡河町木津で重要な水利施設である淡河川疏水を分けた後、南西へと流路を変え、三木市三津田で志染川の本流に合流します。

印南野を潤す淡山疏水

志染川流域の南西に広がる印南野（現在の稲美町周辺）は、古くから水利が悪く、開発が遅れていました。この課題を解決するため、明治時代に入ると、淡河川から水を引き、志染川を越えて印南野まで疏水を通すという壮大な計画が立てられました。これが、イギリス陸軍少将ヘンリー・S・パーマーの設計のもと、三年間の工事を経て1891年（明治24年）に完成した淡河川疏水です。この疏水の特筆すべき構造は、御坂地区で志染川を渡る部分です。ここでは、逆サイフォンの原理を利用した石造りの水道橋が採用されており、これは御坂サイフォン橋として知られています。疏水は橋を渡った後、導水管や数多くの暗渠を通り、遠く離れた稲美町まで水を運びます。

淡河川疏水は、山田川から分岐する山田川疏水と合わせて「淡山疏水」と呼ばれており、日本の主要な疏水の一つとして、琵琶湖疏水などとともに疏水百選に選定されています。この疏水の建設は、国家事業としてではなく、地域の住民たちの強い願いと負担によって始められ、後に県の事業へと移行したという点で、その歴史的意義は非常に大きいと言えます。全長26.5キロメートルに及び、御坂サイフォン橋や28箇所の暗渠を含む大規模な工事でしたが、完成から100年以上を経た現在でも、重要な農業用水路として機能し続けています。御坂サイフォン橋は、その特徴的な二連アーチの形状から「眼鏡橋」という愛称で地域住民に親しまれています。淡山疏水は、2014年（平成26年）には国際かんがい排水委員会によるかんがい施設遺産にも登録されました（ただし、サイフォン橋自体は登録対象に含まれていません）。

流域にかかる橋

志染川の流域には、人々の往来や生活を支える様々な橋が架けられています。代表的なものをいくつか紹介します。

• - 永久橋（三木市宿原）：片側1車線の車道と歩道を備え、兵庫県道513号三木環状線の一部を担っています。
• - 長早橋（三木市志染町）：県道38号線の一部です。
• - 志染大橋（三木市志染町）：片側1車線の車道と歩道が整備された三木市道の一部です。
• - 窟屋大橋（三木市志染町）：片側1車線の車道と歩道があり、三木総合防災公園へのアクセス路として、兵庫県道38号および83号の一部となっています。
• - 御坂新橋（三木市志染町）：御坂サイフォン橋の近くに位置します。
• - 御坂サイフォン橋（三木市志染町）：長さ約752メートル、橋梁部54メートルの規模を持つ、淡河川疏水の一部をなす逆サイフォン橋です。
• - みのり橋（三木市志染町）
• - 鼓橋（三木市志染町）：片側1車線の車道と歩道が設けられ、兵庫県道85号神戸加東線の一部です。
• - 丹生橋（神戸市北区山田町）：片側1車線の車道と歩道があり、兵庫県道85号および563号の一部となっています。
• - 西下橋（神戸市北区山田町）：片側1車線の車道と歩道を持つ神戸市道です。
• - 新坂本橋（神戸市北区山田町）：片側1車線の車道があり、兵庫県道85号の一部です。
• - 大神橋（神戸市北区山田町）：片側1車線の車道と歩道が整備され、兵庫県道85号の一部です。
• - 下茅原橋（神戸市北区山田町）：片側1車線の車道と歩道があり、兵庫県道85号の一部です。
• - 原野橋（神戸市北区山田町）：片側1車線の車道と歩道があり、国道428号の一部です。
• - 幸座橋（神戸市北区山田町）
• - 山田橋（神戸市北区山田町）：片側1車線の車道と歩道があり、兵庫県道15号神戸三田線の一部です。

流域の観光スポット

志染川とその周辺地域には、自然や歴史に触れることができる様々な観光スポットがあります。

つくはら湖・呑吐ダム: 川を堰き止めたダム湖とその周辺は、自然景観が豊かでレクリエーションに適しています。
淡河川疏水・御坂サイフォン橋: 近代化遺産としても価値の高い疏水の構造物を見学できます。特に御坂サイフォン橋は美しいアーチが特徴です。
NESTA RESORT KOBE: 広大な敷地に多様なレジャー施設を備えたリゾート。
箱木家住宅: 日本最古級の民家として知られる歴史的建造物。

これらの場所は、志染川の自然景観とともに、地域の歴史や文化を感じさせてくれます。

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