国際かんがい排水委員会

国際かんがい排水委員会（ICID）とは

国際かんがい排水委員会（International Commission on Irrigation and Drainage, ICID）は、灌漑と排水に関する国際的な非政府組織です。世界各地の灌漑・排水分野における技術交流や発展を促進することを目的に活動しており、この分野では世界最大規模の組織として知られています。

概要

ICIDは1950年に設立され、灌漑・排水技術を通じて、世界の食料と繊維の供給を強化することを目的としています。インドのニューデリーに中央事務局を置き、2015年時点で75の国と地域が加盟しています。組織の運営は、年次開催の国際執行理事会と、3年に一度開催される総会、地域会議、世界かんがいフォーラム（WIF）によって行われます。これらの会議には、加盟各国のICID国内委員会から代表者が参加し、情報交換や技術的な議論が行われます。国際執行理事会には、常任委員会や作業部会などの下部組織が設置されており、具体的な活動を推進しています。

沿革

ICIDの設立は、インドの灌漑中央事務局の担当者が、灌漑に関する国際組織の必要性をインド政府に提言したことがきっかけです。この提言を受け、インドの初代首相ジャワハルラール・ネルーが創設を提唱しました。1948年には、灌漑中央事務局が33か国を招待し、国際機関の必要性を訴え、賛同した8か国によって、1950年6月24日に「国際かんがい水路委員会」(ICIC)としてインドのシムラで設立されました。この設立日を記念して、6月24日は「ICIDの日」とされています。その後、第2回執行理事会で現在の名称「国際かんがい排水委員会」(ICID)に改称されました。

日本は1951年に加盟しました。当時、日本にはインド連絡使節団があり、この使節団が連合国軍最高司令官総司令部（GHQ）を経由して日本の参加を要請し、加盟に至りました。

2012年には、オーストラリアのアデレードで開催された第63回国際執行理事会において、当時の会長から「かんがい施設遺産」制度の創設が提案され、2014年に制度が正式に発足しました。同年9月16日には、大韓民国・光州広域市で開催された第65回国際執行理事会で、青森県の稲生川など17施設が第1号として登録されました。

日本との関係

ICID日本国内委員会

日本は1951年に閣議決定を経てICIDに加盟しました。これは、第二次世界大戦後に日本が加盟した国際組織としては、非常に初期の例です。国内委員会の事務局は、農林水産省農村振興局整備部設計課海外土地改良技術室に置かれています。2015年時点では、東京大学名誉教授の佐藤洋平氏が委員長を務めていました。日本は、特にアジアやアフリカにおける稲作の技術支援に力を入れています。

日本ICID協会

1983年には、民間レベルでのICIDへの参加を促進するため、日本ICID協会が設立されました。この協会は、一般財団法人日本水土総合研究所に事務局を置いています。2014年9月時点で、12の企業、10の団体、137人の個人が会員として登録されています。

かんがい施設遺産

ICIDが2014年に創設した「かんがい施設遺産」制度は、歴史的・技術的に価値の高い灌漑施設を登録・表彰するものです。この制度は、灌漑技術の発展に貢献した施設を後世に伝えるとともに、地域社会における文化遺産としての価値を再認識させることを目的としています。初年度には、日本の稲生川を含む17施設が登録され、その後の登録も継続的に行われています。

ICIDは、国際的な協力のもと、灌漑と排水技術の発展に貢献し、食料の安定供給と地域社会の発展に寄与しています。

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