志賀直人

志賀直人氏（1955年 - ）は、日本の法学、特に労働法学の分野で多大な功績を残した研究者、教育者である。長年にわたり関西外国語大学で教鞭を執り、現在は同大学名誉教授の任にある。

専門分野と研究テーマ

志賀氏の研究は、労働法の中でも人事労務管理論と就業規則に関する研究に深く焦点を当てている。これらの分野は、企業組織における人と雇用の関係性を法的側面から詳細に分析するものであり、現代社会の複雑な雇用形態や働き方の多様化が進む中で、その重要性はますます高まっている。人事労務管理論では、採用、配置、評価、報酬、研修、解雇といった労働者のキャリア全般にわたるプロセスを法的に考察し、企業と労働者の権利義務関係の均衡を探求する。また、就業規則の研究においては、企業内ルールの制定・改定・運用を巡る法的課題、労働条件の不利益変更や労働者の権利保護といったテーマを中心に、その適切なあり方を法的に探究した。志賀氏の研究は、これらの具体的なテーマを通じて、より公正で人間的な労働環境の実現に向けた法的な指針を示すことを目指している。

経歴と学問的背景

東京都出身の志賀氏は、法学の道に進み、大東文化大学法学部を卒業した。さらに同大学院法学研究科へと進み、佐藤時次郎氏の指導のもとで学術的な基盤を築いた。大学院修了後も、研究への情熱は衰えることなく、東京工業大学において慶谷淑夫氏の研究室に研究生として所属し、さらなる研鑽を重ねた。この時期に培われた深い学識と多角的な視点が、その後の労働法研究における独自の視点を形成する上で重要な礎となったと考えられる。

教育者としての歩み

志賀氏の教育者としてのキャリアは、1986年に関西外国語大学短期大学部で講師としてスタートした。以来、2021年に大学を退職するまでの長きにわたり、同大学グループで教育活動に専念した。短期大学部では、1996年に助教授に昇任。その後、関西外国語大学本学の国際言語学部助教授を経て、同教授に就任した。国際言語学部は後に英語国際学部に名称変更されたが、志賀氏は引き続き同学部で教壇に立ち、多くの学生に労働法の知識とその社会における意義を伝えた。グローバル化が進む現代において、国際的な視野を持つ学生に対して、日本の労働法制度だけでなく、広く雇用に関する法的な問題を教授した経験は、その教育者としての幅広さを示している。学生たちは、志賀氏の授業を通じて、社会に出た際に直面しうる労働に関する様々な問題に対する法的思考力を養ったことだろう。

退職と名誉教授

2021年、志賀氏は関西外国語大学を定年により退職した。長年にわたる教育研究活動への貢献と、大学への功績が認められ、同大学から名誉教授の称号が授与された。これは、志賀氏が関西外国語大学の発展に果たした役割がいかに大きかったかを物語るものであり、その学識と人格に対する大学からの敬意の表れである。名誉教授となった現在も、日本の労働法学界におけるその存在感は揺るぎないものとなっている。

主な著作

志賀氏は、研究成果を多くの著作として世に問うてきた。代表的なものとして、以下の書籍が挙げられる。

『労働法と労使関係をめぐる諸問題』（東洋館、1983年）
『雇用の法学』（中央経済社、1997年）
* 『ワンポイント雇用法』（中央経済社、2001年）

これらの著作は、それぞれの時代の労働法や雇用を巡る社会状況を反映しており、特定のテーマに深く切り込んだ専門書から、より多くの読者に労働法を身近に感じてもらうための入門的な内容まで、幅広いニーズに応える内容となっている。『雇用の法学』や『ワンポイント雇用法』といったタイトルは、実務や日常生活で役立つ視点から労働法を解説しようとする志賀氏の意図が伺える。これらの書籍は、労働法を学ぶ学生や研究者、企業の人事担当者、そして自身の労働環境に関心を持つすべての人々にとって、重要な資料となっている。

労働法学への貢献

志賀直人氏は、研究者、そして教育者として、日本の労働法学の発展に重要な足跡を残した。特に、人事労務管理や就業規則といった実践的な分野における深い研究は、理論と実務の橋渡しに貢献した。また、長年にわたる大学での教育活動を通じて、次世代の研究者や実務家、そして社会を担う多くの学生に法的な思考力を育成したことは、計り知れない功績である。関西外国語大学での国際的な環境下での教育経験は、労働法をより広い視野で捉えることの重要性を示すものでもあった。名誉教授となった今もなお、その学識と業績は、日本の労働社会が直面する課題を解決するための基盤を提供し続けている。

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