忘れ雪 (曲)

オフコースの「忘れ雪 / 水いらずの午後」は、1974年10月20日にリリースされた6枚目のシングルです。このシングルは、オフコースにとって異例の経緯をたどった作品として知られています。

収録曲は「忘れ雪」と「水いらずの午後」の2曲で、どちらもこのシングルでのみ聴ける楽曲です。当時、レコード会社からヒットを強く要請されていたプロデューサーの橋場正敏が、外部の作家に依頼して用意した楽曲でした。小田和正と鈴木康博は、アレンジや演奏には参加させてもらえず、ボーカルのみの参加となっています。「忘れ雪」のリードボーカルは小田が、「水いらずの午後」は鈴木が担当しました。

制作の背景には、レコード会社からの強い意向がありました。1974年6月末のミーティングで、レコード会社から作詞家と作曲家を別々に立てるという提案が出され、議論の結果、小田と鈴木のオリジナル曲と合わせて3曲を録音し、その中から選考することになりました。完成したのは、小田の「キリストは来ないだろう」、鈴木の「白い帽子」、そして松本隆作詞、筒美京平作曲の「忘れ雪」でした。当時、グレープの「精霊流し」がヒットしていた影響もあり、「忘れ雪」は似た路線の楽曲としてレコード会社に推されました。最終的に、メンバーの意向が十分に取り入れられないまま「忘れ雪」がシングルとして発売されることになったのです。

メンバーは当初からこの楽曲を「自分たちが望んだものではない」として難色を示していました。橋場の説得でレコーディングには応じたものの、発売直後の10月26日に中野サンプラザで行われたリサイタル「秋ゆく街で」以降のコンサートで歌われることはありませんでした。オフコースと橋場の関係は以前から良好とは言えませんでしたが、この一件が決定的なものとなり、橋場はオフコースのプロデューサーを降板。新たに武藤敏史がプロデューサーに就任しました。

「忘れ雪 / 水いらずの午後」は長らく廃盤となっていましたが、後に3枚組ベストアルバム『OFF COURSE Singles』に両曲とも収録されました。

収録曲
SIDE A: 忘れ雪
SIDE B: 水いらずの午後

クレジット
全作詞: 松本隆
作曲: 筒美京平
* 編曲: 矢野誠

このシングルは、オフコースの音楽性の多様性と、レコード会社との間で起きた葛藤を象徴する作品と言えるでしょう。

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