秋ゆく街で

オフコース初のライブアルバム：『秋ゆく街で ⁄ オフ・コース・ライヴ・イン・コンサート』

『秋ゆく街で ⁄ オフ・コース・ライヴ・イン・コンサート』は、1974年12月20日にリリースされたオフコース初のライブアルバムです。1974年10月26日、中野サンプラザで行われたリサイタル「秋ゆく街で」の模様が収録されています。

制作の背景

セカンドコンサート後、グループを支えるため不本意な仕事をしていたオフコースを次なるステップに進ませたいと考えていたマネージャーの上野博は、中野サンプラザでのコンサートを企画します。当初、メンバーは集客への不安から難色を示しましたが、上野の熱意と説得により開催が決定。コンサートの総経費を捻出するため、東芝EMIにライブレコーディングを提案し、実現に至りました。

コンサートの準備には多くの人が関わり、舞台演出、ミュージシャンの手配、台本の作成など、細部にまでこだわりが尽くされました。チケットは1,542枚売れ、音楽関係者も招待され、当日は会場が大勢の人で埋め尽くされました。

コンサートの内容

コンサートでは、オフコースのオリジナル曲に加え、数多くのカバー曲も披露されました。鈴木康博がリードボーカルを務めるソウルナンバー「WHAT'S GOING ON」や、当時のコンサートで定番だった「外国曲メドレー」などが演奏されました。また、赤い鳥、泉谷しげる、吉田拓郎、小椋佳、斉藤哲夫、井上陽水といった、当時を代表するアーティストの楽曲もカバーされました。

鈴木と小田和正がそれぞれ作曲した「青春」と「秋ゆく街で」も披露。「秋ゆく街で」は、小田がコンサート前夜に作詞したばかりの新曲でした。

後半のステージでは、鈴木がメインボーカルを務める「水曜日の午後」や、アルバム未収録の「白い帽子」「キリストは来ないだろう」など、オリジナル曲を中心に15曲が演奏されました。演奏にはミスもありましたが、オフコースの二人は精一杯のパフォーマンスを繰り広げました。

コンサート終盤、緊張がピークに達した時、観客の一人が舞台に駆け寄り「オフコース万歳!」と叫びました。この一声が会場を大きな感動に包み、オフコースの二人は言葉を詰まらせながらも、感謝の思いを伝えました。アンコールの「僕の贈りもの」では、小田が歌詞を間違えるハプニングもありましたが、会場は温かい笑いに包まれました。

メンバーの回想

コンサート後、鈴木は「感激だった。小田と握手した時は、本当にこいつと一緒にやってきてよかったと思った」と語り、小田は「みんなも喜んでくれたし、本当に心から、さぁ、これからだという気持ちになれました」と振り返っています。

その後の影響

このコンサートの直前に発売されたシングル「忘れ雪」は、オフコースの意向とは異なる形でリリースされたため、コンサートでは演奏されませんでした。この一件が原因で、プロデューサーの橋場正敏がオフコースから離れることになり、武藤敏史へのプロデューサー交代につながりました。

リリース形態

『秋ゆく街で ⁄ オフ・コース・ライヴ・イン・コンサート』は、2005年と2009年にリイシューされています。2005年には、オリジナルLP装丁を復刻した紙ジャケット仕様で、2009年にはSHM-CDフォーマットで再発されました。

このアルバムは、オフコースの初期のライブパフォーマンスを記録した貴重な作品であり、彼らの音楽に対する真摯な姿勢と、当時の音楽シーンの熱気を伝えるものです。

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