忠犬ブル公

トムとジェリー：小さなブルドッグの大きな活躍『忠犬ブル公』

チャック・ジョーンズ監督による1965年制作のトムとジェリー作品、『忠犬ブル公』（原題：The Cat's Me-Ouch!）は、小さなブルドッグが巻き起こす騒動を描いた、痛快なコメディです。

物語は深夜、巣穴から顔を出したジェリーがトムに襲われるシーンから始まります。危機一髪のジェリーは、偶然目にした雑誌の通信販売で、番犬のブルドッグを注文することに。15ドルという値段に惹かれ、いつもトムに怯えているジェリーは、頼もしい味方を得られると期待を膨らませます。

しかし、届けられたのはジェリーよりも小さな、手のひらサイズの豆ブルドッグ。けたたましい鳴き声とは裏腹に、その小ささにジェリーは落胆し、トムは嘲笑します。ところが、この小さなブルドッグは、その見た目とは裏腹に、驚くべきパワーの持ち主だったのです。

トムはブルドッグの予想外の力に圧倒され、逃げ出しますが、ブルドッグは容赦なくトムの毛を丸刈りにしてしまいます。ジェリーはブルドッグの意外な強さに驚きつつも、次第にその頼もしさに惹かれていきます。二匹はすぐに仲良くなり、ブルドッグはジェリーの忠実な番犬となるのです。

しかし、平穏な日々は長くは続きません。トムは再びジェリーを襲い、瓶に閉じ込めてしまいます。ピンチに陥ったジェリーを救うため、ブルドッグはトムが抑えているドアに突進。激しい攻防の末、トムは家から締め出されてしまいます。

怒り狂ったトムは手斧を持って家へ突入しますが、ジェリーを救出したブルドッグは、今度はトムに容赦なく反撃。ボロボロになったトムは病院送りとなり、医者が包帯を解くと、トムの足にはブルドッグが、尻尾にはジェリーが噛みついていたのです。

この結末にトムは、とうとう敗北を認め、思わず微笑んでしまうのでした。小さなブルドッグの活躍によって、トムとジェリー、そしてブルドッグの三者間の勢力図は完全に逆転したのです。

本作の見どころは、なんといっても予想をはるかに超えるブルドッグのパワーと、そのギャップから生まれるユーモラスな展開です。小さな体から繰り出される、トムを圧倒する力強さは、見ている者を笑いと驚きで満たします。

また、トムとジェリーだけでなく、ブルドッグという新たなキャラクターが加わったことで、物語に更なる深みと面白さが加わっています。三者それぞれの個性と関係性が複雑に絡み合い、予測不能な展開が繰り広げられる様は、まさにトムとジェリーシリーズの魅力を凝縮した作品と言えるでしょう。

1980年頃には、日本テレビ系「木曜スペシャル・おかしなおかしな トムとジェリー 大行進」で放映され、その後も繰り返し放送され、DVDにも収録されています。この機会に、小さなブルドッグの活躍をぜひご覧ください。

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