忠誠 (行進曲)

『忠誠（ちゅうせい、Semper Fidelis）』

『忠誠』は、1888年にジョン・フィリップ・スーザが作曲した行進曲で、アメリカ海兵隊の公式の行進曲としてその名が知られています。本曲のタイトルは、ラテン語で「常に忠誠な」という意味があり、海兵隊員の精神を象徴しています。スーザはこの曲を自身の作品の中でも特に優れた行進曲の一つと位置づけていました。

スーザと海兵隊

ジョン・フィリップ・スーザは1880年から1892年までアメリカ海兵隊バンドの楽長を務め、その期間に多くの名曲を生み出しました。当時、海兵隊が使用していた公式の曲は『大統領万歳』でしたが、チェスター・A・アーサー大統領はこの曲を好まず、新たな曲の作曲をスーザに依頼しました。この要求に応え、スーザはまず『大統領ポロネーズ』を1886年に作曲し、続いて『忠誠』を1888年に完成させました。しかしながら、アーサー大統領は1886年に亡くなってしまったため、この曲を聴くことはありませんでした。

曲の特徴

『忠誠』は、ハ長調の8分の6拍子で構成されており、伝統的な行進曲の形を取っています。特にトリオ部分の前半は、スーザが1886年に作曲したトランペットとドラム用の小品「堅固な足取りで」からの旋律を再利用しています。この楽曲の構成要素としては、最初に8小節のドラムソロがあり、その後に信号ラッパ風の旋律が3度繰り返される形をとります。繰り返すごとに、演奏の強さが増していき、最初はピアノで始まり、次にメゾフォルテ、最後にはフォルテッシモと、音量だけでなく伴奏も華やかさを増していきます。

影響と評価

この曲はアメリカ海兵隊の士官および兵士に献げられ、彼らの忠誠心を象徴する音楽として重要な位置を占めています。毎年多くの式典やイベントで演奏され、多くの人々に愛され続けています。また、スーザの作曲スタイルは多くの後の作曲家にも影響を与え、その技術や形式は行進曲の書き方を広く示すものでした。

『忠誠』は、その歴史的背景や音楽的な特徴から、アメリカの軍楽にとって無くてはならない名曲としての地位を確立しています。音楽を通じて深い感情や理念を表現したこの曲は、今後も世代を超えて演奏され続けることでしょう。

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