快楽のススメ

ALI PROJECTの16枚目のオリジナルアルバム（インディーズから通算）である『快楽のススメ』は、2015年9月9日に徳間ジャパンコミュニケーションズから発売されました。このアルバムは、「快楽」というテーマを深く掘り下げた意欲作となっています。

作曲を手掛けた片倉三起也は、以前から「快楽」をテーマにしたアルバムを制作したいと考えていました。当初は「禁忌」もテーマの候補に挙がっていましたが、過去の作品で使用していたため、「快楽」が選ばれました。ただし、片倉は「快楽」という言葉だけでは面白みに欠けると感じ、「ススメ」を付け加えることで、より魅力的なタイトルにすることを試みました。また、「快楽」の読み方を一般的な「かいらく」ではなく、あえて「けらく」とした点も、このアルバムの特徴の一つです。

作詞を担当した宝野アリカは、制作当時について「かわいらしい曲を作った反動で、真逆の曲を作りたくなった。最初は楽しんで作業していたものの、次第に疲れてきた」と語っています。アルバムの制作は、彼女にとっても挑戦的なものであったようです。

タイトル曲である「快楽のススメ」は、制作初期の段階で完成していましたが、ミュージックビデオの制作などで何度も聴くうちに、片倉が「1曲目にふさわしくないのでは」と感じるようになりました。そこで、宝野が気に入っていた「愛と誠」のイントロに近い雰囲気を持つ「陸と海と空と」が、アルバムの1曲目に収録されることになりました。

初回限定版のジャケットには、宝野が黄色いドレスを身にまとい、ジャングルカーペットパイソンという蛇と一緒に写った写真が使用されています。これは、宝野自身が「本物の蛇を巻いてみたい」と考えていたところ、デザイナーから蛇を使ったジャケットの提案があったことがきっかけで実現しました。通常版のジャケットにも、宝野が黒い衣装を着て蛇と一緒に写った写真が採用されており、蛇はアルバムのテーマを象徴する重要な要素となっています。

アルバムには、以下のような楽曲が収録されています。

陸と海と空と: BS日テレ『片岡愛之助の解明!歴史捜査』エンディングテーマ。愛国心や大切な人を守る気持ちに安らぎや快楽を得ることを題材とした大和ソングです。ミュージックビデオには当初、軍帽と日本刀が小道具として使用される予定でしたが、撮影当日に上層部からの通告で使用が取りやめになりました。没バージョンのスチル写真はライナーノーツに掲載されています。ゲオルギー・スヴィリードフ『吹雪 トロイカ』が引用されています。
異端者たちの悦楽: 間奏にサンプリング音源が使用されています。
快楽のススメ: タイトル曲。イントロ・アウトロにサンプリング音源が使用されています。
放蕩娘と無慈悲な遊戯: アストル・ピアソラ『リベルタンゴ』が引用されています。
わたしは慾望という名の處女
禁忌 TABOO: ホアキン・トゥリーナ『5つのジプシー風舞曲 第1集 Zambra』が引用されています。
狩猟令嬢ジビエ日誌: 自分の領地で狩猟する貴族の女性を主人公に、狩った獣の肉を食べて自らの血肉とすることで新たな一日を生きる悦びと快楽を描いた楽曲。宝野は歌詞の執筆にあたり、狩猟の歴史や文化に関する書籍を読み込んだとのことです。
アタラクシア、そして対峙する自己
BAR酔芙蓉へどうぞ: プッチーニ『ラ・ボエーム』からの引用が見られます。
Golden Slumbers Kiss Your Eyes: (限定盤のみ収録)
* 緋ノ糸輪廻ノGEMINI: (通常盤のみ収録)フランチェスコ・パオロ・トスティ『最後の歌』が引用されています。

『快楽のススメ』は、ALI PROJECTの耽美的で退廃的な世界観を、「快楽」というテーマを通して深く追求した作品であり、聴く者をその深淵なる魅力へと引き込むでしょう。

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