怒り (小説)

小説『怒り』について

吉田修一の小説『怒り』は、2012年10月29日から2013年10月19日まで『読売新聞』朝刊に連載された後、加筆修正を経て2014年1月25日に中央公論新社から上・下巻の二部構成で刊行されました。この物語は、ある殺人事件を背景に、人間の心の奥底に潜む感情や、信頼と疑念の間で揺れ動く人間関係を深く掘り下げています。作者の吉田修一は、リンゼイ・アン・ホーカー殺害事件をきっかけに本作を執筆しました。

あらすじ

物語は、八王子郊外で起こった若い夫婦の惨殺事件から始まります。犯人は逃走し、事件から1年後、房総、東京、沖縄に身元不明の3人の男が現れます。彼らはそれぞれの場所で、周囲の人々から訝しがられながらも、徐々に人間関係を築いていきます。しかし、警察が八王子事件の犯人の整形後のモンタージュ写真を公開したことで、それぞれの関係に疑念が生じ始め、物語は複雑に展開していきます。

映画『怒り』について

2016年9月17日には、李相日監督、渡辺謙主演で映画化されました。李監督が吉田修一の作品を映画化するのは、『悪人』に続いて2度目です。映画は、第41回トロント国際映画祭スペシャルプレゼンテーション部門、第64回サンセバスティアン国際映画祭コンペティション部門にも出品され、国際的にも高い評価を得ました。

キャスト

映画には、豪華なキャストが集結しました。千葉編では、渡辺謙が槙洋平役、宮崎あおいが槙愛子役、松山ケンイチが田代哲也役を演じました。東京編では、妻夫木聡が藤田優馬役、綾野剛が大西直人役を演じました。沖縄編では、森山未來が田中信吾役、広瀬すずが小宮山泉役、佐久本宝が知念辰哉役を演じ、物語に深みを与えています。

スタッフ

監督・脚本は李相日、音楽は坂本龍一が担当しました。撮影は笠松則通、照明は中村裕樹、美術は都築雄二と坂原文子が手がけ、作品の世界観を豊かに表現しています。

受賞歴

映画『怒り』は、数々の賞を受賞しています。第40回山路ふみ子映画賞では、山路ふみ子女優賞を宮崎あおいが受賞。第41回報知映画賞では、李相日が監督賞、綾野剛が助演男優賞を受賞しました。第29回日刊スポーツ映画大賞では、妻夫木聡が助演男優賞、宮崎あおいが助演女優賞を受賞。さらに、第40回日本アカデミー賞では、妻夫木聡が最優秀助演男優賞を受賞するなど、多くの賞に輝きました。また、第26回東京スポーツ映画大賞では、綾野剛が助演男優賞、広瀬すずが助演女優賞を受賞しました。

その他

映画の公開後には、関連書籍として『小説「怒り」と映画「怒り」吉田修一の世界』が刊行され、作品への理解を深めるための資料となりました。

映画『怒り』は、人間の複雑な感情や社会の暗部を深く掘り下げた作品として、多くの観客に感動と衝撃を与えました。小説と映画、それぞれの表現を通して、人間の心の闇と光を描き出した傑作です。

この作品はフィクションであり、実在の人物や事件とは一切関係ありません。

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