怪人対名探偵

『怪人対名探偵』は、芦辺拓氏による推理小説であり、「森江春策の事件簿」シリーズの8作目にあたります。本作は、本格ミステリベスト10の2001年版で第10位にランクインするなど、高い評価を受けています。

特筆すべきは、江戸川乱歩への深い敬意とオマージュが込められている点です。物語を構成する全ての章題が、乱歩の著名な作品から引用されており、乱歩作品への愛が随所に感じられます。

あらすじ

物語は、一見無関係に見える事件が連続して発生するところから始まります。暴漢に襲われる女子高生、誘拐される小学生、事故死に見せかけられた男性、そして癌を移植された老人……。これらの事件の背後には、《殺人喜劇王》を名乗る人物の存在がありました。彼は、過去の恨みを晴らすため、対象者の親族や縁者にまで無慈悲な制裁を加えていたのです。

名探偵・森江春策は、これらの事件の真相を解き明かすべく捜査に乗り出します。事件の背後に隠された驚愕の真実とは一体何なのか？

主な登場人物

森江 春策（もりえ しゅんさく）: レトロビルに事務所を構える弁護士であり、卓越した推理力を持つ名探偵。
新島 ともか（にいじま ともか）: 森江の秘書兼助手。「不思議の国のアリバイ」事件以来の相棒。
三谷 駿（みたに しゅん）: 探偵小説好きの小学6年生。下校中に誘拐される。
村下 玲美（むらした れみ）: 16歳の高校生。下校中に暴漢に襲われ、顔に怪我を負う。駿とはいとこ同士。
村下 加奈江（むらした かなえ）: 玲美の母親。喫茶店を経営。
花筐城太郎（はながたみ じょうたろう）: 作中に登場する、人気作家が生み出した名探偵。推理中に花に塩をかける癖がある。
有明 雅彦（ありあけ まさひこ）: 花筐の少年助手。
稲賀 剛士（いなが たけし）: 大手広告代理店《大通ギガント》の副部長。
河津 裕香（かわづ ゆうか）: 玲美のクラスメイト。森江のことを知り、玲美と共に事務所を訪れる。
滝 儀一（たき ぎいち）: 大阪府警の警部。森江とは旧知の仲。
来崎 四郎（きざき しろう）: 仮名文字新聞の記者。
平田 鶴子（ひらた つるこ）: 森江の行きつけの喫茶店〈謎譚亭〉のオーナー。

書籍情報

講談社ノベルス：2000年5月5日発行、ISBN 4-06-182132-6、表紙 辰巳四郎
講談社文庫：2004年12月15日発行、ISBN 4-06-274952-1、表紙 藤田新策、解説 喜国雅彦

『怪人対名探偵』は、緻密なトリック、意外な展開、そして乱歩作品への愛情が詰まった、ミステリファン必読の一冊と言えるでしょう。

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