恋と十手とお銀ちゃん

『恋と十手とお銀ちゃん』

横山光輝による日本の漫画作品であり、江戸時代を舞台にした捕物帳です。

本作は秋田書店発行の漫画雑誌『月刊プリンセス』の1975年3月号に掲載された短編読み切りとして発表されました。

物語の概要

物語の舞台は江戸の町。ある日、商家の主人である山形屋のだんなが何者かに殺害されるという事件が発生します。町の治安を守る岡っ引の藤吉は、事件発生後まもなく、被害者である山形屋で働く小番頭の兵助を犯人だと決めつけ、事態を早急に収束させようとします。

しかし、そこに颯爽と現れたのは、十手を持つ謎の美女、お銀ちゃんでした。彼女は既成概念にとらわれず、独自の視点から被害者の周辺を徹底的に調べ上げます。その結果、藤吉が犯人と断定した兵助以外にも、少なくとも3人の人物に容疑がかかる可能性を見出します。しかし、どの容疑者にも決定的な証拠が見つからず、捜査は難航を極めます。

行き詰まりを感じ、事件解決の糸口を掴めずに苦戦するお銀ちゃんは、その優れた明晰な頭脳を頼り、信頼できる仕事仲間である錦一郎のもとを訪ねることを決意するのでした。複雑に絡み合う人間関係と、真犯人を探し出すための推理、そして登場人物たちの思惑が交錯する、緊迫感のある捜査劇が描かれます。

登場人物

• - お銀ちゃん

本作の主人公であり、類稀なる捜査能力と美貌を兼ね備えた女性です。「捕物小町」の異名を持ちますが、本名は明かされず、町の人々からは親しみを込めて「お銀ちゃん」と呼ばれています。卓越した行動力と、鋭敏な観察眼・推理力によって、これまで数々の難事件を解決に導いてきました。捕手としても優れた腕前を持ちますが、時に見せる勝気な性格のため、想い人でもある錦一郎からからかわれることもあります。

• - アゴ平

お銀ちゃんの片腕として、常に彼女と行動を共にし、捜査を献身的にサポートする心強い協力者です。

• - 藤吉

江戸の岡っ引。お銀ちゃんとは事件捜査を通じて関わることが多いですが、捜査方針や考え方で度々対立し、常にお銀ちゃんを意識してライバル視しています。

• - 錦一郎

お銀ちゃんが事件解決に詰まった際に、その助言を仰ぐ青年です。お銀ちゃんをも凌ぐほど非常に優れた明晰な頭脳と、探偵のような鋭い推理力を持っています。お銀ちゃんの想い人ですが、彼自身も美形で優雅な振る舞いをするため非常に人気があり、多くの女性に慕われています。そのため、お銀ちゃんがたびたび彼の周りの女性にやきもちを焼く様子が描かれます。

• - 山形屋のだんな

物語の発端となる殺害事件の被害者です。江戸の商家の主人でした。

• - おかみ

被害者である山形屋のだんなの妻です。夫との関係は冷え切っていましたが、事件発生時のアリバイが確認されています。

• - 兵助

山形屋で働く小番頭です。事件直後に岡っ引の藤吉に犯人と決めつけられてしまいますが、お銀ちゃんの捜査によって他にも容疑者が浮上します。

• - 太吉

かつて山形屋で番頭を務めていた男です。事件発生前に被害者と接触していたことが判明し、容疑者の一人となります。

• - 大番頭

山形屋の最高責任者です。事件当日は芝居小屋や酒屋に出向いており、アリバイが成立しています。

短編集への収録

本作は、いくつかの横山光輝作品の短編集に収録されています。

• - 『横山光輝名作集45風夜叉』（アップルBOXクリエート発行、1999年12月25日初版）
• - 『影丸と胡蝶』（講談社発行、2001年5月11日初版）
• - 『時代劇傑作集 火盗斬風録』（小学館発行、2012年4月20日初版）

他作品における影響

本作は、他のメディア作品に影響を与えています。

特に、アニメーション作品であるOVAシリーズ『ジャイアントロボ 地球の燃え尽きる日』には、本作の主人公であるお銀ちゃんをモデルとした同名のキャラクターが登場します。また、同シリーズの第21話のサブタイトルは「恋と十手とお銀ちゃん」として、本作の題名がそのまま流用されています。さらに、関連するイラストなどでは、本作の主要キャラクター（お銀ちゃん、アゴ平、藤吉、錦一郎など）が、『ジャイアントロボ』のキャラクターたちの構図に置き換えて描かれたものも見られます。

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