恋のT.P.O.

概要

『恋のT.P.O.』は、日本のロックバンド、近田春夫&ハルヲフォンによって1976年（昭和51年）12月5日に世に送り出されたシングルレコードです。このシングルは、バンドがキングレコードから本格的なデビューを飾った先行シングル『シンデレラ』に続く、第2弾として発表された作品であり、彼らのキャリア初期における重要なステップを示しています。

制作背景とメンバー

このシングルのリリース当時のハルヲフォンは、バンドリーダーである近田春夫を中心に、ドラムの恒田義見、ベースの高木英一、ギターの小林克己という四名のメンバーで活動していました。しかし、『恋のT.P.O.』のレコーディングに際しては、通常のドラマーである恒田義見ではなく、バンドの初期メンバーであった金沢ジュンがドラムを担当したという興味深いエピソードが残されています。この情報は、恒田義見自身の回想によって明らかになったもので、彼はこのレコーディングではドラマーとしてではなく、コーラスの一員として参加したと語っています。このように、作品によっては通常のメンバー編成とは異なる形で制作が進められることがあったという、当時のバンドの内情を垣間見せる一面も、このシングルにまつわる話として特筆されます。

収録曲

本シングルには、以下の2曲が収録されています。

1. 恋のT.P.O.
作詞・作曲・編曲：近田春夫
シングルA面曲。独特のリズムとメロディーが特徴です。
2. プラスチック・ムーン
作詞・作曲・編曲：近田春夫
シングルB面曲。A面とはまた異なる雰囲気を持つ楽曲です。

両曲とも、バンドの中心人物である近田春夫が作詞、作曲、そして編曲の全てを手掛けており、彼の音楽世界が凝縮された作品と言えます。

アルバム収録とバージョンの違い

これらの楽曲は、シングルのリリース後にそれぞれ別のアルバムに収録されることになります。A面のタイトル曲『恋のT.P.O.』は、1978年6月21日に発売されたアルバム『電撃的東京』に収められました。一方、B面の『プラスチック・ムーン』は、それより少し早い1977年9月に発売されたアルバム『ハルヲフォンレコード』に収録されています。しかし、重要な点として、これらのアルバムに収められているバージョンは、このシングルに収録されたオリジナルバージョンとは異なります。アレンジや演奏に違いがあり、シングル盤独自のサウンドやフィーリングは、アルバムバージョンでは味わうことができません。そのため、シングル盤は、これらの楽曲の初期の、あるいは異なる解釈での演奏を聴くことができる貴重な音源となっています。

シングルバージョンの希少性

このシングルに収録されたバージョンは、前述のようにアルバムとは異なるため、その音源の入手には限りがあります。かつて、これらのシングルバージョンは、1999年にPヴァインレコードから発売されたコンピレーションCD『ニューロックの夜明け 番外編⑨ キング・ニューロック・シングル集 ファンキー・ダッコNo.1』に収録され、CDという形で多くの音楽ファンに提供される機会がありました。これにより、長らくアナログレコードでしか聴けなかった貴重な音源にアクセスすることが可能になりました。しかし、残念ながら、このコンピレーションCDも現在では廃盤となっており、市場で容易に見つけることは難しい状況です。したがって、『恋のT.P.O.』と『プラスチック・ムーン』のオリジナルシングルバージョンは、現在でも非常に希少価値の高い音源とされており、当時のアナログ盤を探すか、廃盤となったコンピレーションCDを見つけ出すことが、これらの貴重なサウンドを聴くための主な手段となっています。

近田春夫&ハルヲフォンの多様な音楽性を知る上で、『恋のT.P.O.』シングルは、アルバムバージョンとの違いも含めて、彼らの活動の一断面を示す重要な作品と言えるでしょう。

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