恋は悲しきもの

恋は悲しきもの（Why Does Love Got to Be So Sad?）

1970年にデレク・アンド・ザ・ドミノスが世に送り出した楽曲に、「恋は悲しきもの」（原題：Why Does Love Got to Be So Sad?）があります。この作品は、ギタリストの巨匠エリック・クラプトンと、キーボード兼ボーカルのボビー・ウィットロックという、バンドの中心メンバー二人の共作によって生まれました。タイトルの通り、恋愛における切なさや悲哀を表現した、情感豊かなブルースロックナンバーです。

制作の舞台裏

この楽曲が制作されたのは、デレク・アンド・ザ・ドミノスにとって唯一のスタジオレコーディングアルバムとなる『いとしのレイラ』（Layla and Other Assorted Love Songs）のためでした。ロック史において金字塔として語り継がれるこの二枚組アルバムの録音は、音楽プロデューサーとして名高いトム・ダウドのプロデュースのもと、フロリダ州マイアミにあるクライテリア・スタジオにて行われました。

レコーディングセッションは1970年8月31日に幕を開けました。特筆すべきは、このアルバム制作に、オールマン・ブラザーズ・バンドのギタリスト、デュアン・オールマンがゲストとして参加している点です。彼のスライドギターはアルバム全体のサウンドに深みとテクスチャーを加え、「恋は悲しきもの」の録音においても重要な役割を果たしました。特に、9月1日にはデュアン・オールマンのギターパートがオーバーダビング（重ね録り）され、楽曲に独特の味わいが加わっています。その後、9月9日にはさらなる追加録音が行われ、楽曲の完成度を高める作業が進められました。これらの精緻な録音プロセスは、エンジニアのロン・アルバートによって丁寧に記録されています。

リリースとその展開

完成した「恋は悲しきもの」は、デレク・アンド・ザ・ドミノスの代表作『いとしのレイラ』に収められ、アルバムは1970年11月9日に発表されました。

アルバムリリース後、この楽曲は異なる形態でもリスナーの手に届けられました。日本では、アルバムがリリースされた翌年の1971年にシングルカットが行われています。この日本独自企画盤のカップリングには、同じくアルバム収録曲である「ベル・ボトム・ブルース」が選ばれました。

さらに、1973年には、彼らのライブ・アルバム『In Concert』（1973年発表）に収録された演奏バージョンが、イギリスやアメリカ合衆国を含む様々な国でシングルとしてリリースされました。このライブシングルは、アルバム収録テイクを編集し、3分22秒に短くまとめられたショートバージョンです。B面には、クラプトンが以前在籍していたバンド、ブラインド・フェイスの楽曲で、同じライブアルバムに収められていた「プレゼンス・オブ・ザ・ロード」が配されました。スタジオ録音とは異なる、ライブならではの臨場感とエネルギーが感じられるバージョンとして、多くのファンに聴かれています。

作者自身による再演

「恋は悲しきもの」の共同作者であるボビー・ウィットロックは、自身のソロ活動においてもこの楽曲を取り上げています。彼は、1976年に発表したソロ・アルバム『Rock Your Sox Off』の中で、この曲をセルフカバーしました。オリジナルのデレク・アンド・ザ・ドミノスによる演奏とは異なる、ウィットロック自身の解釈とアレンジによるバージョンとして、楽曲の新たな側面を示しています。

「恋は悲しきもの」は、短期間の活動ながらもロック史に大きな足跡を残したデレク・アンド・ザ・ドミノスの重要なレパートリーの一つであり、エリック・クラプトン、ボビー・ウィットロック、そしてデュアン・オールマンといった才能が結集した結晶として、今なお多くの音楽ファンに愛され続けている名曲です。

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