恐怖の白ネズミ

『恐怖の白ネズミ』(The Missing Mouse)：街を揺るがす白ネズミ騒動

ウィリアム・ハンナとジョセフ・バーベラ監督による名作アニメーション『トムとジェリー』シリーズの一編、『恐怖の白ネズミ』。本作は、いたずら好きなジェリーと、彼を追いかけるトムのいつものドタバタ劇が、思いもよらぬ方向へと転がっていく、予測不能な展開が魅力の作品です。

物語は、冷蔵庫を物色していたジェリーが、トムにいたずらされ、壁に激突するという場面から始まります。その衝撃で倒れた白い靴墨を浴びたジェリーは、全身真っ白に染まってしまいます。

一方、トムはラジオから流れるニュースに耳を傾けていました。それは、高性能爆薬を内蔵した白ネズミが実験施設から脱走したという、衝撃的な内容でした。トムは驚きと不安を感じ、家の戸締りを厳重に行います。

同じニュースを聞いていたジェリーは、自分の体が白くなったことを利用しようと企みます。彼はわざとらしくトムの前に現れ、白ネズミになりすましてトムを恐怖に陥れます。ジェリーは、高所から飛び降りたり、わざと体を強打するなど、爆弾が爆発するような仕草でトムをからかい、散々振り回します。

しかし、調子に乗って飛び跳ねていたジェリーは、水を張った流し台に落ちてしまい、靴墨が流れ落ちてしまいます。彼の正体がトムにばれてしまうと、トムはジェリーを家から追い出してしまいます。

しかし、その隙に、本物の白ネズミがトムの家に侵入してきます。リビングに戻ったトムは、クルミを割って食べている白ネズミを発見します。「ジェリーがまた化けている」と勘違いしたトムは、ハンマーで白ネズミを殴りつけようとしますが、白ネズミは巧みにそれをかわします。トムはなんとか白ネズミを捕まえ、水で洗って靴墨を落とそうとしますが、全く効果がありません。窓際には、ジェリーが「ボクはここだよ！」と手を振っています。

ようやく本物の白ネズミだと悟ったトムは恐怖に震え、研究所に連絡しようとします。しかし、その時再びラジオからニュースが流れ始めます。

ニュースの内容は、先ほどとは打って変わって「白ネズミは爆発する危険性はない」というものでした。この言葉を聞いたトムの態度は一変します。彼は白ネズミを掴み上げ、ジェリーを追い出したときと同じように、勢いよく蹴り飛ばしました。しかし、その瞬間、閃光が走ります。最初のニュースの通り、白ネズミは大爆発を起こしたのです。

街全体が瓦礫の山と化す中、ラジオからは「白ネズミが爆発することはないのでご安心ください」というアナウンスが繰り返し流れていました。瓦礫の山から首を出したトムは、しゃがれた声で「この大嘘つきめが！」と叫びます。

本作は、予測不能な展開と、トムとジェリーのコミカルなやり取りが見事に融合した、傑作アニメーションと言えるでしょう。一見、単純なドタバタ劇に見えますが、そこには社会への風刺や、人間の予測不能な行動などが巧みに織り込まれています。また、スタッフのクレジットにも注目したい点があります。ウィリアム・ハンナとジョセフ・バーベラといった、アニメ史に名を刻む巨匠たちが制作に携わっているのです。彼らの卓越した技術と才能が、この作品を不朽の名作たらしめていると言えるでしょう。

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