恐怖の遊星魔人

概要

『恐怖の遊星魔人』は、水木しげるが「東真一郎」名義で1958年に暁星書房から刊行した貸本漫画です。当時、水木は兎月書房を中心に活動しており、他社から出版する際には別名義を用いていました。本作は、水木自身も存在を忘れていた作品で、出版社の倒産により刊行されたか不明だったため、「幻の本」と呼ばれていました。しかし、後に現物が発見され、籠目舎と青林堂から復刻版が発売。籠目舎版は300部限定の豪華版、青林堂版は予約販売のみでしたが、2010年に小学館クリエイティブから一般書籍として初めて復刻されました。

あらすじ

物語は、科学者として選ばれながらも不当な理由で却下された「部利木鬼太郎」が、プライドを傷つけられ自殺するところから始まります。その後、フラフープで遊んでいた子供たちが空に舞い上がり失踪する事件が多発。捜査主任の横山も失踪し、息子の横山一郎は父を探すため独自に調査を開始します。一方、政府は余知田総監にロケットQを開発させますが、総監はロケットを東京に向けて急発進させます。実は、余知田総監の正体は死んだと思われていた鬼太郎でした。鬼太郎は日本征服を企て、東京を破壊し始め、横山一郎は鬼太郎の出生の秘密に迫ります。

主な登場人物

部利木 鬼太郎（ぶりき おにたろう）
ブリキ屋の息子で、千年か二千年に一人の天才。醜い容姿と口臭のために人々に嫌われており、その恨みから東京を破壊します。
横山 一郎（よこやま いちろう）
鬼太郎の友人。失踪した父を捜すうちに事件の真相に近づき、鬼太郎が関与していることを知ります。
横山 正直（よこやま まさなお）
警視庁の捜査主任。子供たちの失踪事件を捜査中に自身も失踪してしまいます。
余知田総監（よちだそうかん）
事件の捜査を指揮する人物。ロケットQに乗り込みますが、実は鬼太郎が変装した姿で、本物の総監は顔の皮を剥がされ寝込んでいます。
絵良井博士（えらいはかせ）
横山一郎が鬼太郎の家で見つけた墨汁を分析し、鬼太郎の秘密を解き明かします。

書誌情報

『恐怖の遊星魔人 限定版BOX』（小学館クリエイティブ、2010年3月、ISBN 978-4-7780-3134-3）
『貸本漫画集(4) 恐怖の遊星魔人 他』（講談社〈水木しげる漫画大全集〉、2015年5月、ISBN 978-4-06-377534-1）

参考文献

山口信二『水木しげる貸本漫画のすべて』YMブックス、2007年5月。ISBN 978-4-903548-08-1。

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