恐怖分子

映画『恐怖分子』について

『恐怖分子』（きょうふぶんし、原題：恐怖份子、英題：Terrorizers）は、1986年に公開された台湾映画で、エドワード・ヤン監督の代表作の一つです。この映画は、複雑な人間ドラマと社会的なテーマを描く作品であり、公開当初から多くの注目を集めました。『恐怖分子』は、1987年の金馬奨で最優秀作品賞を受賞するなど、国際的にも評価されており、ロカルノ国際[[映画祭]]で銀豹賞、アジア太平洋[[映画祭]]では最優秀脚本賞を受賞しています。日本では1996年に一般公開され、2015年にはデジタルリマスター版が劇場で上映されました。

あらすじ

この映画は、若者のシャオチェンが主人公です。カメラが趣味の彼は、ある日銃声を聞き、不良少女シューアンが怪我をして逃げる現場に出くわし、彼女に一目惚れします。この出来事から、シャオチェンはシューアンに強く惹かれ、仲間たちが集う不良のたまり場で暗室を借りることになります。

その時、作家の妻イーフェンは執筆がうまく進まず悩んでおり、一方で医師の夫リーチョンはキャリアアップを目指して上司に取り入ろうとしていました。このように、登場人物それぞれが異なる悩みを抱え、物語が進行します。

不良少女シューアンは、怪我が癒えないまま、いたずら電話を始めます。この電話は作家妻にインスピレーションを与え、彼女の創作意欲を呼び覚まします。しかし、医師夫は妻の創作活動に理解を示さず、二人の関係は次第に疎遠になり、イーフェンは元恋人である編集者と再び親密な関係になり始めます。シューアンもまた、イタズラ電話を重ねながら、売春に手を出し、偶然そこに居合わせたシャオチェンとの関係は深まることはありませんでした。

イーフェンはその後、文学賞を受賞し、成功を収めますが、物語は次第に暗い方向へ進展します。医師夫は課長昇進が遠のき、妻と編集者の仲睦まじい姿を目撃し、心に深い悲しみが蓄積されていきます。彼は友人の刑事と酒を酌み交わし、自身の苦悩を隠そうとしますが、翌朝、刑事の目覚めとともに医師夫の姿が消え、拳銃がなくなっていることに気付きます。

クライマックスと結末

物語はここから急展開し、医師夫は拳銃を使い上司や妻の愛人である編集者を殺し、自らは警察に追われる身となります。しかし、実際のところは、医師夫の内面的な妄想が展開されているに過ぎず、現実には彼は友人の刑事の家で拳銃自殺を果たしていました。その同時刻、イーフェンは元カレの編集者と共にベッドを共にしているのです。

『恐怖分子』は、抑圧された欲望や人間関係のもつれが引き起こす悲劇を描いた、心理的に深い作品です。この映画は、登場人物それぞれの内面的な葛藤や社会における孤立感を鮮やかに浮き彫りにし、鑑賞者に強い印象を与えます。エドワード・ヤン監督が描くこの作品は、視覚的にもストーリー的にも見る者に多くの思考を促す、簡潔にして力強いメッセージを伝えていると言えるでしょう。

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