恐怖王

恐怖王について

『恐怖王』は江戸川乱歩によって書かれた中編探偵小説で、1931年から1932年にかけて『講談倶楽部』で連載されました。初刊は1932年に平凡社から出版され、今回はその内容を詳しくご紹介します。

作品の概要

本作は、世間を恐怖に陥れようとする自己顕示欲に満ちた犯罪者、恐怖王が主人公です。彼は様々な奇抜な方法を用いて自身の名声を広め、他者に恐怖感を与えます。物語は賑やかな展開から始まりますが、時間が進むにつれて荒唐無稽な出来事が続くため、読む者を驚かせます。中には多くの謎が残されたままとなる場面もあり、最後には突如として結末を迎えます。

乱歩自身はこの作品をあまり成功作として捉えていなかったようですが、様々な謎や意外な展開を通して読者を魅了しています。全体としては、文庫版で120ページから150ページ程度の分量に収められた作品です。

主要登場人物

• - 恐怖王: 自己顕示欲が強く、人々を恐怖に陥れようとする面白くも狂気じみた犯罪者です。彼の行動によって物語は進展します。
• - 黒瀬 三吉（ゴリラ男）: 外見はゴリラのようで、頭をオールバックにしているが、恐怖王の仲間として登場します。
• - 大江 蘭堂: 探偵作家で、恐怖王に狙われる役回りです。物語の中心的なキャラクターの一つです。
• - 布引 庄兵衛: 銀行家で、最近娘を亡くし、恐怖王の手の中で苦しむ人物です。
• - 布引 照子: 庄兵衛の娘であり、物語の重要なキーとなる存在です。
• - 鳥井 純一: 照子の婚約者で、庄兵衛の銀行で働いています。
• - 花園 京子: 大江の恋人で、恐怖王の手に落ちる運命を辿ります。
• - 喜多川 夏子: 大江の小説のファンであり、物語の中で重要な役割を果たします。

あらすじ

恐怖王と呼ばれる怪人が日本を震撼させ、彼の奇妙な行動は常に人々の注目を集めています。彼は照子の遺体とゴリラ男との結婚写真を庄兵衛に送りつけたり、身体に「恐怖王」の刺青を施したり、さらには米粒に細かい文字でその名を刻み込むなど、次々と衝撃的な手法で自らの存在をアピールしています。さらに、飛行機雲で「Kyofuo」の文字を描くなど、奇抜さは際立っています。フラストレーションが募る中、探偵作家の大江蘭堂もまた、恐怖王に目をつけられてしまいます。

恐怖王は一体誰なのか、なぜ彼はこうした恐怖の行動に出たのか。物語はこの謎を巡り、徐々に展開していきます。

出版情報

『恐怖王』はこれまでにいくつかの文庫から再刊されています。例えば、1973年には角川文庫『白髪鬼』として、1995年には春陽文庫からも出版されています。多くの読者に親しまれているこの作品は、江戸川乱歩の代表作の一つとして、今後も読み継がれていくことでしょう。

総括

乱歩の作品は常に独特な視点と複雑な人間心理を描いており、『恐怖王』も例外ではありません。多様なキャラクターが絡み合う中で展開される謎解きとサスペンスは、読者を引き込む魅力を持っています。この作品を通じて、探偵小説の醍醐味を改めて感じることができるでしょう。

もう一度検索