恐竜たちの船

恐竜たちの船：ドクター・フーの驚異の宇宙冒険

イギリスのSFドラマ『ドクター・フー』第7シリーズ第2話「恐竜たちの船」（原題: Dinosaurs on a Spaceship）は、2012年、BBCで放送された、スリリングでユーモラスなエピソードです。異星人のタイムトラベラー、11代目ドクター（マット・スミス）と、コンパニオンのエイミー・ポンド（カレン・ギラン）、ローリー・ウィリアムズ（アーサー・ダーヴィル）に加え、ローリーの父ブライアン（マーク・ウィリアムズ）、古代エジプトのネフェルティティ王妃（リアン・スティール）、大物ハンターのジョン・リデル（ルパート・グレイヴス）といった個性豊かな面々が、物語を彩ります。

彼らの冒険の舞台は、恐竜を多数乗せた巨大宇宙船。実は、これはサイルリアンの宇宙船、いわば方舟だったのです。しかし、そこでは闇商人ソロモン（デイビッド・ブラッドリー）が、サイルリアンを操り、恐竜を貴重な商品として虐殺していました。ドクターたちは、この恐ろしい陰謀を阻止するため、危険な戦いに身を投じることになります。

製作の裏側：恐竜と個性的なキャラクターたち

このエピソードの着想は、特殊効果チームによる「ドクター・フー」に恐竜を登場させるという提案から生まれました。暗い雰囲気の第1話に続く、より明るく楽しいエピソードを目指して制作されました。脚本家のクリス・チブナルは、番組製作総指揮のスティーヴン・モファットと共に、ストーリーラインと登場人物を練り上げました。予算の都合から恐竜を物語の中心に据えることができず、他の要素を大きく展開する必要がありました。そのため、様々なキャラクターが絡み合う、複雑で魅力的なストーリーが生まれたのです。

チブナルは、時空を超えた個性的なキャラクターたちを登場させることを提案しました。『ドクター・フー』だからこそ可能な、様々なバックグラウンドを持つキャラクターたちが織りなす人間模様は、見どころの一つです。ネフェルティティが自身の時代に戻らないという選択は、歴史的事実に基づいています。また、後のエピソードで退場するエイミーとローリーに焦点を当てるため、ローリーの父を登場させることで家族関係を掘り下げています。

キャストには、マーク・ウィリアムズ（ブライアン役）、ルパート・グレイヴス（リデル役）、デイビッド・ブラッドリー（ソロモン役）など、実力派俳優が名を連ねています。ソロモンのモデルは、チブナルが「ビジネスマンとソマリ族の海賊の融合」と表現した人物です。ソロモンの召使ロボットの声は、コメディコンビMitchell and Webbが担当し、絶妙なユーモアを演出しています。

撮影と特殊効果：恐竜たちのリアルな描写

「恐竜たちの船」は第7シリーズで最初に制作されたエピソードの一つで、サウル・メッツスタインが監督を務めました。番組史上最大級のセットが使用され、エンジンルームのシーンはヴェール・オブ・グラモーガンにあるサダンザウンビーチで撮影されました。

予算の都合から、恐竜は物語の中心からは外されました。そのため、小道具とCGIを駆使して、リアルな恐竜描写を実現しました。トリケラトプスに乗るシーンでは、俳優マット・スミスは肩パッドを着ける必要があり、苦労もあったようです。ラプトルのCGモデルは、他のSFドラマから流用することでコストを抑えました。タイトルシークエンスのロゴにも恐竜の皮膚のテクスチャが使用され、第7シリーズ前半のロゴのデザインを踏襲しています。

放送と評価：高い視聴率と好意的な評価

「恐竜たちの船」は、2012年にイギリスとアメリカで放送され、高い視聴率を獲得しました。日本ではHuluで配信されました。批評家からは、概ね肯定的な評価を得ています。楽しいストーリー展開、迫力ある特殊効果、個性豊かなキャラクター、そして『ドクター・フー』シリーズ全体を貫くテーマが見事に融合した作品として高く評価されました。一部からは、暗い雰囲気や、プロットの詰め込み過ぎといった指摘もありましたが、全体的には成功したエピソードと言えます。

ホームメディア：DVDでの発売

日本では、2015年に『ドクター・フー ニュー・ジェネレーション DVD-BOX 2』に収録されて発売されました。

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