恩智満一

恩智左近満一：南北朝時代の豪族の足跡

恩智左近満一（おんぢ みちかず）は、鎌倉時代の終わりから南北朝時代にかけて活躍した豪族で、楠木正成に従ったことで広く知られています。彼は、俗に「楠公八臣」と称される武将の一人として名を残しています。また、恩智神社の社家出身であり、宮司も務めた伝承を持つ人物です。

恩智城の建立とその役割

彼の名が特に知られる理由の一つは、河内国高安郡の恩智村、現在の大阪府八尾市に恩智城を築城したことです。恩智城は1334年から1336年にかけて建設されたと言われており、楠木正成やその家族と共に南朝方の重要な拠点となりました。

さらに、恩智左近満一は兵法書「軍用秘術聴書」や「楠兵記」といった著作の編纂に携わったとも伝えられていますが、これらの文献の存在や内容については詳細が不明瞭であり、評価を受けることが難しい状況です。

湊川の戦いとその後

1336年、延元元年（建武3年）5月25日には、湊川の戦いが勃発しました。この戦闘において、楠木正成が戦死したことは、恩智左近満一にとっても非常に大きな影響を与えました。正成の戦死後、彼はその息子・楠木正行に従い、引き続き南朝方に尽力しましたが、恩智城自体は湊川の戦いの終息を経て落城してしまいます。

その後、後醍醐天皇が吉野に還幸した際、恩智左近満一は八尾別当賢幸とともに吉野に赴き、天皇の守護にあたったとされています。南朝の存続を支える重要な役割を担ったものの、運命は厳しく、延元2年（1337年）6月、彼は急病により亡くなってしまいます。

系譜と墓所

恩智左近満一の先祖には、恩智貞吉や父の恩智満俊がいます。彼の墓所は、大阪府八尾市恩智中町5丁目にあります。墓所の説明によると、恩智神社の参道入口から東高野街道を南に進んだ場所に「恩智左近旧跡」の碑が立っており、墓へは脇の石階段を上がることで到達できます。特に墓の敷地内に植えられているくすのきは、大阪市が指定した保全樹木に認定されています。

また、説明文によれば、墓は生前に自分自身の冥福を祈るために、恩智の有志によって建てられたと言われています。自己供養のために設けられた逆修の意向を示すものと捉えられています。

大正8年（1919年）には、恩智左近満一は従四位を追贈され、近鉄大阪線の恩智駅近くには、彼の功績や恩智の桜についての説明板も設置されています。

存在の曖昧さ

ただし、恩智左近満一についての古文書や研究論文は非常に限られており、彼の存在自体が疑問視されることも少なくありません。このため、彼は楠公八臣の一員として認識されながらも、架空の人物扱いを受けることもあるのが現状です。彼の真の姿や影響については、今後の研究が待たれるところです。

もう一度検索