恩給

恩給について

恩給（おんきゅう）とは、日本における公務員の退職後や死亡後に、本人またはその遺族が安定した生活を営むために政府から支給される金銭を指します。この制度は、1923年に制定された恩給法（大正12年法律第48号）に基づいています。地方公務員の場合は、各地方公共団体が独自に条例を設けて給付が行われており、時に「退隠料」と呼ばれることもあります。

恩給の歴史

近代的な恩給制度の始まりは、1875年および1876年にさかのぼり、海軍退隠令や陸軍恩給令が発布されました。その後、官吏恩給令が1884年に設けられ、太政官に恩給局が設立されました。この時期、官庁ごとにバラバラな恩給制度が存在していたため、制度が複雑化しました。1890年には軍人恩給法が公布され、1923年に恩給法が制定されて制度の統一が図られました。

この法律により、恩給の体系は普通恩給、増加恩給、一時恩給、傷病賜金、扶助料、一時扶助料に整理され、「公務員及びその遺族には恩給を受ける権利がある」と定義されました。しかし、官業部門など一部の公務員は恩給の対象外とされ、これに対しては官業共済組合が設立され、後に社会保険制度が築かれました。

しかし、1930年代の不況の中で、公務員に対する恩給への批判が高まり、1933年には恩給法の改正が進められ、支給の抑制がなされました。第二次世界大戦後の1945年には連合国によって恩給の支給が禁止される一方で、1946年には特例として旧軍人の恩給が廃止され、その後、旧軍人への恩給復活が進められました。最終的に1953年に恩給が復活し、現在も支給が続いています。

恩給の種類

恩給は様々な種類に分類されており、次のような区分があります：

• - 文官恩給
• - 軍人恩給
• - 知事裁定恩給

恩給法第2条によれば、恩給の種類は年金方式に基づく「普通恩給」「増加恩給」「扶助料」、および一時金方式に基づく「傷病賜金」「一時恩給」「一時扶助料」があります。

恩給の支給方法

恩給の支給は、法律や条例に基づき詳細に規定されています。恩給は通常、毎年1月、4月、7月、10月の4回に分けて支給されます。

公務員共済制度との関係

1958年と1959年の法律改正により、国家公務員と地方公務員は共済組合からの年金が支給されるようになり、恩給制度は元々の受給権が発生している者に対する支給に移行しました。

現在の恩給受給者数

2024年3月末時点では、旧日本軍で一定期間勤務した軍人に対する「普通恩給」の受給者数は1093人で、前年より788人減少しました。恩給を受ける軍人は1970年度にピークを迎え、現在では受給対象となる元兵士も多いとされていますが、存命の戦場体験者数は不明です。

経済的背景と課題

生活に困窮している遺族が高利貸しに恩給証書を担保にすることが多かったため、政府は1938年に恩給を担保にした融資制度を設立するなどの施策を講じました。これにより、遺族が経済的に困難な状況にあっても、一定の生活保障が得られるよう努めています。

終わりに

恩給制度は公務員とその遺族の生活を支える重要な仕組みであり、その歴史や現状を理解することは、社会保障のあり方について考える上で非常に重要です。

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