悪を呼ぶ少年

悪を呼ぶ少年

『悪を呼ぶ少年』（あくをよぶしょうねん、原題：The Other）は、1972年にアメリカ合衆国で公開されたホラーおよびサイコ・スリラー映画です。監督は繊細な人間ドラマでも知られるロバート・マリガンが務めました。本作は、作家トム・トライオンが1971年に発表した小説『もう1人の子』を、トライオン自身が脚本として脚色し映画化したものです。

作品概要

物語は、1935年のコネチカット州を舞台に、夏の穏やかな田舎の風景の中で繰り広げられます。主人公はナイルズという名の少年と、その双子の兄弟ホランド。一見、平和で幸福な家族の日常が描かれますが、やがて少年の周囲で不気味な出来事が次々と発生し始めます。サイコ・スリラーというジャンルにふさわしく、作品は表面的な恐怖に終始せず、登場人物、特に子供たちの複雑な心理や、家族関係の歪み、そして現実と幻想の境界線といったテーマを深く掘り下げていきます。観客は、何が真実で何がそうでないのかを見極めようと、登場人物たちの視点に引き込まれ、徐々に追い詰められていくような感覚を味わうことになります。

ロバート・マリガン監督は、陽光溢れる夏の風景の中に潜む影や、子供たちの無邪気さと潜在的な残酷さの対比を巧みに描き出しており、作品全体に不穏で底冷えするような雰囲気を漂わせています。特に、子役たちの演技は、物語の心理的な深みを表現する上で重要な役割を果たしており、彼らの純粋さの中に垣間見える異様さが、観る者に強い印象を与えます。

キャスト

本作には、実力派の俳優たちが顔を揃えています。双子の少年ナイルズをクリス・ユドヴァーノキーが、ホランドをマーティン・ユドバーノキーが演じました。彼らの繊細かつ時にぞっとするような演技が、物語の核となっています。

主要な大人キャストとしては、祖母のエーダ役を演じたユタ・ヘーゲン、ナイルズの母親アレクサンドラ役を演じたダイアナ・マルドアなどが挙げられます。ユタ・ヘーゲンは著名な演劇指導者としても知られ、その存在感ある演技で作品に深みを与えています。その他のキャストには、アンジェリーニ氏役のヴィクター・フレンチ、ジョージ伯父役のルー・フリッゼル、ライダー役のジョン・リッターなどがいます。

日本語吹替

本作は、日本でもテレビで度々放送され、日本語吹替版が存在します。初回放送は1976年8月8日にテレビ朝日系列の『日曜洋画劇場』で行われました。当時の主要キャストの日本語吹替は以下の通りです。

エーダ：ユタ・ヘーゲン（吹替：南美江）
アレクサンドラ：ダイアナ・マルドア（吹替：北浜晴子）
* ナイルズ：クリス・ユドヴァーノキー（吹替：大見川高行）

この日本語吹替版は、当時のテレビ映画放送の雰囲気を伝えるものとしても記憶されています。

まとめ

『悪を呼ぶ少年』は、単なるホラー映画としてだけでなく、人間の心理や家族のあり方を問いかけるサイコ・スリラーの傑作として、現在も評価されています。その独特の雰囲気と、後味の悪い結末は、観る者に長く記憶される作品と言えるでしょう。チャイルドホラーや心理的な恐怖を扱った作品に関心のある映画ファンにとって、見逃せない一本です。

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