悪魔の寵児

悪魔の寵児

『悪魔の寵児』は横溝正史による長編推理小説で、名探偵・金田一耕助が主人公として登場します。この作品は1958年の『面白倶楽部』に連載された後、角川文庫として刊行され、さらに女性漫画家JETによってコミカライズもされています。本作では、金田一がこれまでに出会った中で最も陰惨な犯罪者と対峙します。

概要

物語は、金田一耕助が「これほどえげつない嗜好を持った犯人を他に知らない」と語る犯罪者によって引き起こされた事件から始まります。この悪魔のような人物は「雨男」として知られ、彼は防水レインコートとゴム長靴、そしてフード付きの服装で現れます。その姿は、雨の日にしか姿を現さないことから被害者と一種の関係を持つことができる重要なトリックの鍵となっています。

この殺人事件では、多くの人物が雨男らの手にかかります。金田一は彼の巧妙な手口を追い詰めながら、再度、この犯人が関与する残虐な事件を解決しなければなりません。

あらすじ

1958年初夏、東京の吉祥寺にある本屋に「雨男」が現れ、葉書の印刷を依頼します。その内容は一見無害なカップルの挨拶状でしたが、そこに禍々しい黒枠が加えられていました。その賀状は後に風間欣吾の愛人たちに届けられる事になります。風間は、影のある新興実業家であり、その生活には多くの秘密が潜んでいました。挨拶状の受け取り手である女性たちの中には、風間が影響を持つ高級酒場のホステスや、かつての知人たちが含まれていました。

ある日、風間の家で美樹子という女性が死体で発見され、その死体は心中の形に見立てられていました。しかし、事件にはさらなる疑惑が絡みます。水上三太という東都日報の記者が事件を追う中で、早苗という美しいホステスが関与していることが発覚し、物語はますます複雑な展開を迎えます。彼女の兄、石川宏が生死の境を彷徨っている間に、さらなる殺人事件が発生。

物語は、早苗と宏、そして風間が交錯する中で進行し、次々に裏切りや陰謀が明らかになっていきます。殺人事件に絡む人々の過去や交わる愛憎は、さながらミステリーのダンスのように織りなされていくのです。

登場人物

本作の主要なキャラクターには、金田一耕助、風間欣吾、愛人たち、そして一連の事件に関わる記者たちがいます。金田一は冷静沈着な頭脳を持つ探偵であり、風間欣吾は魅力的な反面、非常に危険な人物として描かれています。特に、愛人たちとの複雑な関係性が物語に更なる深みを与えています。

総括

『悪魔の寵児』は、単なるミステリー小説を超え、横溝正史による緻密な心理描写やキャラクターの個性が光る作品です。ミスディレクションや巧妙なトリックを駆使した金田一の捜査を通じ、読者は解決されていく謎に興奮し続けることでしょう。特殊な装いをした犯人との対決は、予想外の結末へと導いていきます。この作品は、青春や愛情の裏に潜む人間の暗い部分を描く、深いテーマを含んだ作品として、多くのファンに愛され続けています。

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