悲しき玩具

『悲しき玩具』の概要

『悲しき玩具』（かなしきがんぐ）は、日本を代表する歌人、石川啄木が手がけた個人歌集です。この歌集は1912年6月20日に東雲堂書店から刊行され、啄木の第二歌集となります。彼の作品は、その死後に友人である土岐哀果と若山牧水によって世に送り出されました。

刊行の経緯

本作の根底には、啄木が「一握の砂以後（四十三年十一月末より）」というタイトルでまとめていた短歌ノートがあります。このノートは1910年11月末から1911年8月21日までの192首の短歌が、見開きの左側に4首ずつ記されていました。歌集の刊行は啄木の生前から計画されており、彼は哀果と牧水の支援を受け、1912年4月9日に刊行の決定が下されました。その数日後、残念ながら啄木は亡くなってしまいます。

歌集の名称「悲しき玩具」は、友人の哀果が啄木自身の歌論「歌のいろいろ」からとったものです。この作品は一般的に「カナシキガング」と読みますが、啄木の本来の意図は「カナシキオモチャ」であったとされています。哀果は、当初はノートのタイトルをそのまま用いることを考えていましたが、東雲堂の助言により変更しました。

内容について

『悲しき玩具』は、本文136ページと土岐哀果による「あとがき」3ページから構成されています。収録されている短歌の数は194首で、啄木の晩年に書かれた2首が冒頭に追加されています。これらの短歌は、啄木が彼の前作『一握の砂』で用いたページごとに2首を掲載する方式を引き継いでいますが、研究者の近藤典彦はこの冒頭の追加によって、元々の意図からのずれが生じたと指摘しています。

多くの短歌が啄木の困窮した生活を色濃く反映しているとされ、情緒豊かな表現が特徴的です。表記法については、第一歌集と同じ三行書きが用いられていますが、さらに独自の手法として句読点や感嘆符、字下げ等が見られます。近藤典彦は、特に短歌ノートの113首目から導入された冒頭の字下げに注目しています。

主な歌

歌集には啄木の心情を表した数々の名歌が収められています。例えば、

• - 呼吸すれば、／胸の中にて鳴る音あり。／凩よりもさびしきその音！
• - 眼閉づれど、／心にうかぶ何もなし。／さびしくもまた、眼をあけるかな
• - 新しき明日の来るを信ずといふ／自分の言葉に／嘘はなけれど――

これらの詩は、啄木の内面的な葛藤や生活の苦しみ、未来への希望などを訴えかけています。

まとめ

『悲しき玩具』は、石川啄木の人生の最後の時期を反映した深いメッセージが込められた作品であり、日本の短歌の中でも特に重要な位置を占めています。彼の歌集は、現代の読者にも感情を揺さぶる力を持ち続けています。

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