惑星物質試料受け入れ設備

惑星物質試料受け入れ設備

惑星物質試料受け入れ設備は、独立行政法人宇宙航空研究開発機構（JAXA）が運用する重要な施設であり、宇宙探査機によって地球外から持ち帰られた物質サンプルを適切に採取、分析、保管することを目的としています。この設備があるのは相模原キャンパスで、地球外の物質を扱うために特別に設計されています。

概要

宇宙探索におけるサンプルリターンの試みは、NASAのアポロ計画や旧ソ連のルナ計画に始まりました。これらの計画では月の物質を地球に持ち帰ることに成功しており、その成果を基に、ますます多様な天体が探査の対象となっています。地球外物質を直接採取することは、隕石や宇宙塵を用いた分析に比べ、より確実な成分解析を可能にします。

隕石や宇宙塵はその起源を特定することが難しく、また地球に落下する際には汚染の可能性が高まります。一方で宇宙探査機は、目的地の天体から採取した物質を、できる限り未汚染の状態で地球に持ち帰ることができます。NASAのスターダストやジェネシス計画を経て、日本でも「はやぶさ」による小惑星イトカワからのサンプルリターンが期待されており、このような背景の中で惑星物質試料受け入れ設備が設立されました。

設備の構成

この設備は4階建ての研究棟内にあり、1階には物質の取り扱いに必要なさまざまな機能が集約されています。具体的には、惑星試料情報処理室、クリーンルーム運用室、加工・洗浄室、更衣室、試料準備室、電子顕微鏡室、惑星試料処理室の7つの部屋が設けられています。

特に、サンプルの汚染を防ぐために、4つのクリーンルームが設置され、それぞれ異なる清浄度が要求されています。例えば、惑星試料処理室は非常に高い清浄度が求められ、空気中の微細な粒子を極力減らす工夫が凝らされています。また、入室する際には人数制限や使用禁止の物品が定められており、使用する衣類も厳格に指定されています。

クリーンチャンバー

反して、最も重要な役割を果たすのがクリーンチャンバーです。ここでは、地球の環境からの汚染を避けるための作業が行われ、高度な真空状態が維持されています。クリーンチャンバーは二つの室で構成されており、第一室では真空状態での作業、第二室では試料の取り出しや記録が行われます。試料取り出しの際は、特殊な器具を使用して慎重に行われ、微細な試料でも失われないよう工夫されています。特に、採取に使用する窒素は99.99995パーセント以上の純度をもったものを使用し、さらに高純度にするための処理が施されています。

運用と未来の展望

この設備の運用が開始されたのは、2010年6月に帰還したはやぶさのサンプルカプセルが到着してからです。カプセルの洗浄や開封作業は、この施設で行われ、地球外のサンプルがどのように扱われていくかの基盤が整いました。今後もはやぶさ2や月からのサンプルリターンが計画されており、新たな試料がもたらされることが期待されています。また、火星など生命の可能性が指摘される天体からのサンプルリターンにおいては、宇宙検疫への対応が重要な課題となります。

このような運用を通じて、惑星物質試料受け入れ設備は地球外物質の研究と開発の中で、ますます重要な役割を果たすことが期待されています。

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