愛のイエントル

愛のイエントル (Yentl)

『愛のイエントル』、原題『Yentl』は、アイザック・バシェヴィス・シンガーの短編小説「Yentl the Yeshiva Boy」を原作とし、1983年に公開されたミュージカル映画です。この作品は、監督、製作、脚本、主演をバーブラ・ストライサンドが担当し、音楽はミシェル・ルグランが手掛けています。作品は、ユダヤ教のタルムードを学ぶことが許されなかった時代に、ポーランドでのユダヤ人女性の物語を描いています。

概要

映画の舞台は、女性がタルムードを学ばないのが常識とされていた時代です。主人公のイエントルは、ポーランドに住むユダヤ人女性で、父親から密かにタルムードの教えを受けて育ちます。彼女の父は亡くなってしまいますが、イエントルは学びを続けるために男装し、アンシェルとしてイェシーバー（ユダヤの教育機関）に通うことを決意します。この作品は、その旅路を描く喜劇的かつ感動的なミュージカルとして、多くの人々に支持されました。

公開当初、映画はニューヨークやロサンゼルスの計13館で限定上映されましたが、徐々に上映館が増えていき、幅広い観客に受け入れられることになりました。また、映画は過去に同じくシンガーの短編小説を基にした戯曲『Yentl』がブロードウェイで上演されており、この戯曲は1975年に初演されて223回の公演を記録しています。

あらすじ

物語は、イエントル・メンデルが主人公です。彼女はポーランドのアシュケナジー・ユダヤ人共同体に住む女性で、ラビである父から独自にタルムードを学び、その知識を深めていきます。しかし父が亡くなった後、イエントルはタルムードの学びを続けるために、自ら男装し、アンシェルという名前でイェシーバーに通うことになりました。彼女は新しい環境で学友となったアヴィグドルとその婚約者ハダスと深い関係を築いていくことになります。ところが、ハダスの家族がアヴィグドルとの婚約を解消し、またイエントルの男装に気づくことで、物語はさらに複雑な方向へ進展していきます。

キャスト

• - イエントル（バーブラ・ストライサンド）：日本語吹替：吉田理保子
• - アヴィドール（マンディ・パティンキン）：日本語吹替：玄田哲章
• - ハダス（エイミー・アーヴィング）：日本語吹替：高島雅羅

受賞とノミネート

本作は、第56回アカデミー賞においてエイミー・アーヴィングが助演女優賞にノミネートされ、美術賞や音楽賞など、多数の部門でノミネートされました。また、第41回ゴールデングローブ賞では、作品賞を含む複数の賞にノミネートされ、名作としての地位を確立しました。さらに、音楽アルバムが第27回グラミー賞のオリジナル作曲アルバム賞にノミネートされるなど、幅広く評価されています。

放送情報

この映画は1989年4月19日（水曜日）にTBSの「水曜シネマパラダイス」で初めて放送され、日本の視聴者にも広く知られるようになりました。

ユダヤ教の伝統を背景にした感動的な物語『愛のイエントル』は、単なるエンターテイメントに留まらず、フェミニスト的な視点を持つ作品としても高く評価されています。女性が自身の夢を追い求める力強い姿を描き出したこの映画は、時代を超えた普遍的なメッセージを持っています。

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