愛の水中花

「愛の水中花」は、日本を代表する女優の一人である松坂慶子が、歌手としても活動していた時期にリリースした記念碑的なシングル曲です。1979年7月1日に日本コロムビアより発売されました。

この楽曲は、リリース直後の同年7月12日から放送が始まった、松坂慶子自身が主演を務めたTBS系列の人気ドラマ「木曜座『水中花』」の主題歌として書き下ろされました。ドラマの持つ独特の世界観と楽曲が見事に融合し、大きな注目を集めました。

作詞は、ドラマの原作を手がけた著名な作家、五木寛之氏が担当しています。歌詞の制作には特別なエピソードがあります。当初五木氏が書いた歌詞について、松坂慶子が「歌う上での実感が掴みにくい」と正直な感想を伝えたところ、五木氏はその意見を真摯に受け止め、全ての歌詞を現在の形に書き直したといいます。また、レコーディングに関しても、2回目のテイクで一旦OKが出た後、松坂慶子がマリリン・モンローの「帰らざる河」のような、より感情を込めて語りかけるような歌唱表現を追求したいという強い希望から、およそ1週間後に改めてスタジオに入り再録音を行ったという逸話があり、この曲にかける彼女の情熱がうかがえます。

この楽曲は、商業的にも大成功を収めました。オリコンのシングルヒットチャートでは最高位となる週間2位を記録し、これは松坂慶子の歌手活動におけるシングル売上としては歴代1位という快挙でした。1979年全体の年間シングルチャートにおいても、第33位にランクインするなど、その年の音楽シーンを代表する一曲となりました。

テレビでの露出も相まって、その人気はさらに高まりました。特に、当時絶大な影響力を持っていたTBS系の音楽番組『ザ・ベストテン』では、1979年9月17日放送回で「今週のスポットライト」コーナーで初めて紹介されました。その後、同年10月25日から11月29日にかけて、実に6週連続で番組の週間ランキング10位以内に入り続けるなど、その高い人気と認知度を全国に示しました。

シングルのカップリング曲には「雨の舗道で」が収録されています。

「愛の水中花」は、オリジナル発表から長い年月を経ても、そのメロディや歌詞が多くの人々に記憶されており、様々な場面で活用され続けています。例えば、建築資材メーカーであるアイカ工業のCMソングとして、長年にわたり替え歌が使用され、広く親しまれていました。また、近年では社会的な啓発活動にも用いられており、2017年には京都府警察が特殊詐欺被害防止を呼びかける目的で「サギの流行歌」という替え歌を制作し、YouTubeなどで公開しています。さらに、2024年5月からはサントリー「オールフリー」のCMソングにも替え歌が採用されており、声優の林原めぐみさんが歌唱し、お笑いコンビの南海キャンディーズが出演するなど、時代や分野を超えて「愛の水中花」は息づいています。

もう一度検索