愛の終りに (ジャッキー吉川とブルー・コメッツの曲)

愛の終りに

「愛の終りに」（あいのおわりに）は、日本のグループサウンズシーンで一時代を築いたジャッキー吉川とブルー・コメッツが、1966年4月20日にシングルとして発表した楽曲です。彼らにとって実質的なデビューシングルと位置付けられる「青い瞳」のリリースから間もない時期に送り出された作品であり、グループの初期における器楽演奏能力を示す一例として知られています。

楽曲詳細

この「愛の終りに」は、歌唱パートを含まないインストゥルメンタル、すなわち器楽曲として制作されています。当時の日本のポピュラー音楽市場においては、歌が中心の楽曲が一般的でしたが、高い演奏技術を持つブルー・コメッツは、こうした歌のない楽曲でもその実力を発揮しました。

楽曲の作曲を手がけたのは、後に「ブルー・ライト・ヨコハマ」など多くのヒット曲を生み出すことになる彩木雅夫です。本作発表当時は、新居一芳という名前でクレジットされていました。彩木はこの「愛の終りに」が自身の作曲家としてのレコードデビュー作となったことを後に語っています。作曲のインスピレーション源となったのは、当時の日本で流行していたイタリアやフランス映画でした。彼はそうした映画のテーマ曲に深く感動し、「いつか自分もこのような心に響く楽曲を作りたい」という思いからこのメロディーを生み出したと述懐しています。彩木は自らギターを演奏したデモテープを作成し、複数のレコード会社に持ち込みましたが、最終的に日本コロムビアがその才能に注目し、レコード化が実現したという経緯があります。

楽曲のメロディーは、シャンソンの名曲「夜霧のしのび逢い(La Playa)」に通じるような、叙情的でどこか物悲しい哀愁を帯びた調べが特徴です。当時のシングル盤のライナーノーツにも、その類似性が指摘されています。演奏には、クラシックギターと口笛が主旋律を担い、そこにフルートやオルガンが加わることで、楽曲の雰囲気を豊かに彩っています。特に口笛の音色は、郷愁を誘うような切ない響きを添えています。

この楽曲が発売された1966年当時は、現在の音楽チャートの基準となるオリコンチャートがまだ発足していなかったため、公式なチャート記録は残されていません。しかし、およそ3万枚というセールスを記録したとされており、これはインストゥルメンタル楽曲としては決して少なくない枚数であり、当時のリスナーが本曲の美しいメロディーを受け入れたことを示しています。

カップリング曲「バラ色のドレス」

シングルのB面には、「バラ色のドレス(My Rosy Dress)」が収録されています。こちらも「愛の終りに」と同様に、歌唱のないインストゥルメンタルナンバーです。作曲と編曲は、ブルー・コメッツのキーパーソンであり、後に数々のヒット曲を手がける井上忠夫（後の井上大輔）が担当しました。

「バラ色のドレス」は、サックスとエレキギターを前面にフィーチャーしたアレンジが特徴です。A面曲がクラシックギターや口笛を主体としているのに対し、こちらはよりロックやジャズの要素を感じさせるサウンドに仕上がっています。メロディーラインは、シャンソンの「恋心(L'amour, C'est pour rien)」に似た雰囲気も持ちながら、より日本の歌謡曲的な親しみやすさが感じられます。A面とB面で異なる音楽性を持つことで、ブルー・コメッツの多岐にわたる音楽的素養が示されています。

ジャケットデザインと再リリース

当時のシングルレコードのジャケットには、メンバーの集合写真が配されており、背景には楽曲タイトル「愛の終りに」やB面曲にちなんだものか、バラを思わせるような美しい花のイラストが描かれていました。

時を経て、この楽曲は再び音楽ファンに届けられる機会を得ました。2014年6月11日には、過去の音源をCD-Rという形で復刻するMEG-CDシリーズの一つとして、「愛の終りに」もシングルとしてリリースされました。これにより、アナログレコードが入手困難な現代においても、手軽にこの貴重な初期インストゥルメンタル作品を聴くことが可能となっています。

「愛の終りに」は、ブルー・コメッツのインストゥルメンタルにおける実力を示す代表的な初期作品の一つであり、日本のポピュラー音楽史における器楽曲の佳作として、今なお記憶されています。

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