愛は不死鳥

「愛は不死鳥」（あいはふしちょう）は、1970年4月20日に歌手・布施明によってリリースされた通算20枚目のシングル盤レコードです。この楽曲は、布施がデビューから6年目を迎え、若手からベテランへとさしかかる中堅期において、彼のキャリアを代表する一曲として広く認知されています。

この楽曲の誕生には、作曲を担当した平尾昌晃との間に特別なエピソードが存在します。平尾昌晃は、この曲が発表される前年、1969年まで結核という重い病と闘い、およそ1年近くにも及ぶ長期入院を余儀なくされていました。音楽活動を休止していた彼の復帰は、多くの音楽ファンにとって待ち望まれていました。「愛は不死鳥」は、まさに平尾が病から回復し、無事退院した後、音楽界への本格的な復帰を告げる復活リサイタルで、彼自身が歌うために書かれた新曲だったのです。

しかし、長い闘病生活を経た平尾には、この楽曲の持つドラマティックな旋律、特に感情を込めて歌い上げる高音部分を、自身の体調が万全でない中で歌いこなすことが困難でした。そのため、この楽曲を平尾自身が歌唱する計画は見送られることとなり、卓越した歌唱力を持つ布施明に託されることになったのです。平尾昌晃の病からの文字通りの「復活」という背景を持つこの楽曲は、布施明という新たな歌い手を得て、ついに世に送り出されることとなりました。

「愛は不死鳥」の作詞は川内康範、作曲は平尾昌晃、編曲は小谷充が手がけました。力強く、時に切なく歌い上げられるメロディラインと、逆境に立ち向かい、何度でも立ち上がる「不死鳥」を象徴するような歌詞が、聴く者に深い感銘を与えました。このシングル盤には、カップリング曲として山上路夫作詞、平尾昌晃作曲、小谷充編曲による「霧の羽田空港」が収録されています。

「愛は不死鳥」は発売と同時に大きなヒットを記録し、布施明はこの曲で1970年の大晦日に放送された「第21回NHK紅白歌合戦」への出場を果たしました。これは彼にとって4度目の紅白の舞台となりました。この時の布施明のパフォーマンスは、今なお日本のテレビ史、そして歌謡史における名シーンとして語り継がれています。特に鮮烈な印象を残したのが、楽曲タイトル「不死鳥」を視覚的に表現するために特別に作られた、絢爛豪華な衣装です。不死鳥が翼を広げたようなデザインのこの衣装は、布施明の圧倒的な歌唱力と相まって、視聴者に忘れられない記憶を刻み込みました。

このように「愛は不死鳥」は、作曲家の病からの回復という個人的なドラマ、それを歌い継ぐ布施明という歌手の存在、そして象徴的な紅白歌合戦でのパフォーマンスが一体となり、単なるヒット曲の枠を超えた特別な楽曲となりました。布施明の代表曲として、また歌謡史の一ページを飾る名曲として、「不死鳥」のように力強く、今もなお多くの人々に愛され続けています。

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