愛・アマチュア

『愛・アマチュア』(1994年)は、アメリカ合衆国で製作された、ハル・ハートリー監督・脚本による異色の映画作品です。ニューヨークの路地裏を舞台に、記憶喪失の男と、彼を取り巻く個性的な女性たちの物語が展開されます。

物語は、負傷した男が路上に倒れている場面から始まります。その男、トーマスは、黒髪の女性ソフィアに襲われ、記憶を失っていました。意識を取り戻したトーマスは、近くのカフェで、イザベルという女性と出会います。イザベルは元尼僧で、現在はポルノ作家として活動していますが、独特の作風のため仕事は順調ではありません。

トーマスを自宅に招き入れたイザベルは、彼の世話をします。一方、ソフィアは「ロリータ・ポルノ」の異名を持つポルノ女優であり、暴力的な夫であったトーマスから虐待を受けていました。復讐のため、トーマスを殺害しようとした彼女は、経理屋のエドワードと共謀し、トーマスを陥れる計画を進めます。

徐々に記憶を取り戻し始めたトーマスは、イザベルと共に以前住んでいたアパートを訪れます。イザベルはトーマスに好意を抱いており、アパートで見つけたセクシーな衣装を着け、彼を誘惑します。しかし、その直後、復讐を企むソフィアと、犯罪組織の殺し屋が現れ、緊迫した状況に陥ります。

この作品には、イザベル役をイザベル・ユペール、トーマス役をマーティン・ドノヴァン、ソフィア役をエリナ・レーヴェンソン、エドワード役をダミアン・ヤングが演じています。個性的な俳優陣の演技が、物語に独特の雰囲気を与えています。

サウンドトラックは、ハル・ハートリー自身によるオリジナル楽曲を含むもので、イーストウエスト・ジャパン（現ワーナーミュージック・ジャパン）からネッド・ライフル名義で発売されました。しかし、ビデオは廃盤となり、長らく入手困難でしたが、2014年にはJVDよりDVDがリリースされ、2019年にはKADOKAWAより再リリースされるなど、現在でも注目を集めています。

『愛・アマチュア』は、1994年カンヌ国際映画祭監督週間、ニューヨーク映画祭、トロント映画祭に招待され、東京国際映画祭ヤングシネマ1994コンペティションではシルバー賞を受賞するなど、高い評価を受けています。また、ハル・ハートリー自身による同名小説も出版されており、映画と合わせて作品の世界観をより深く理解することができます。

この作品は、記憶喪失、復讐、そして人間の複雑な感情を絡み合わせた、独特のユーモアとシニカルな視点が特徴です。一見混沌としたストーリー展開でありながらも、各登場人物の行動原理が丁寧に描かれており、観る者に深い印象を与えます。記憶喪失という設定は、観る者にトーマスと同じように、状況や登場人物を徐々に理解していく体験を与え、物語に没入感を生み出しています。

『愛・アマチュア』は、単なるポルノ映画の枠を超えた、人間の深層心理や現代社会の歪みを反映した、傑作と言えるでしょう。現在では入手が困難な作品ではありますが、その独特の世界観と高い評価は、多くの映画ファンを魅了し続けています。

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