ハル・ハートリー

ハル・ハートリー：インディーズ映画界の異才

1959年11月3日、アメリカ合衆国ニューヨーク州ロングアイランド生まれのハル・ハートリーは、インディペンデント映画界を代表する映画監督、脚本家、プロデューサーである。独特のユーモアとシニカルな視点、そして緻密に構成された脚本で知られ、世界中の映画ファンを魅了している。

揺籃期から映画制作へ

ハートリーは4人兄弟の3男として生まれ育つが、11歳の時に母親を亡くすという辛い経験をする。その後は妹と親戚の家に身を寄せながら、青年時代を過ごす。1977年に地元の高校を卒業後、当初は絵画に興味を持ちマサチューセッツ美術大学に入学するも、そこで映画製作の魅力に惹かれ、映画制作の道へと進む。

ニューヨークに戻り、生計を立てるために働きながら8mmフィルムを用いた自主制作映画を制作。その後、ニューヨーク州立大学パーチェス校で映画製作を専攻。アラム・アヴァキアンの下で脚本と演出を学び、ルネサンス文学や哲学にも触れるなど、幅広い知識を習得した。この間、後に彼の作品に携わることになる多くのスタッフや俳優たちと出会う。卒業制作として制作された短編映画『Kid』は、彼の才能を世に知らしめる第一歩となった。

低予算ながら高く評価された初期作品

卒業後は父親の建設会社で働きながら、自主制作映画を続ける。そして、1988年、初の長編映画『ニューヨーク・ラブストーリー』（原題:The Unbelievable Truth）を制作。わずか7万5千ドルの低予算ながら、地元で11日間という短い撮影期間で完成させたこの作品は、数々の映画祭で高い評価を受け、彼のキャリアを大きく飛躍させる。

続く『トラスト・ミー』（原題:Trust）、『シンプルメン』（原題:Simple Men）といった作品も高い評価を受け、ハートリーはインディーズ映画界における確固たる地位を築いていく。これらの作品は、独特の会話劇、シュールなユーモア、そしてどこか切ない人間ドラマが絶妙に織りなされており、多くの観客の心を掴んだ。

国際的な活躍と多様な作品

ハートリーの活躍はアメリカ国内にとどまらず、国際的な舞台にも広がっていく。1995年の作品『FLIRT/フラート』では、東京でのロケを行い、そこで出会った日本人女優の二階堂美穂と結婚。二階堂はその後、ハートリー作品に多く出演するようになる。

『ヘンリー・フール』では1998年度カンヌ国際[[映画祭]]脚本賞を受賞。また、長編映画だけでなく、短編映画、ミュージックビデオ、舞台演出など、幅広い分野で才能を発揮。自身の作品では音楽も手掛け、90年代半ばまではネッド・ライフルというペンネームを使用していた。2000年代以降は、商業的な成功よりも、自身の表現を追求した実験的な作品制作に力を入れるようになる。

日本における評価と作品公開

日本では、2000年代以降は未公開作品が多かったが、近年では『はなしかわって』『フェイ・グリム』『ネッド・ライフル』など、いくつかの作品が劇場公開され、改めてその独特な世界観が注目を集めている。これらの作品は、独特のユーモアと社会への鋭い視点を持ちながら、人間の心の奥底を深くえぐるような内容となっており、日本での再評価を後押ししている。

現在に至るまで

現在も精力的に作品を制作し続けているハートリー。長編映画『No Such Thing』や『The Girl from Monday』など、日本未公開の作品も数多く存在する。彼の作品は、常に新たな挑戦と実験に満ち溢れており、今後もその独特な世界観で、多くの観客を魅了し続けるであろう。

主な作品

長編映画

『ニューヨーク・ラブストーリー』（1989）
『トラスト・ミー』（1990）
『シンプルメン』（1992）
『愛・アマチュア』（1994）
『FLIRT/フラート』（1995）
『ヘンリー・フール』（1997）
『ブック・オブ・ライフ』（1998）
『No Such Thing』（2001）
『The Girl from Monday』（2005）
『フェイ・グリム』（2006）
『はなしかわって』（2011）
『My America』（2014）
『ネッド・ライフル』（2014）

短編映画多数

ミュージックビデオ多数

舞台演出

『Soon』(1998)
* 『La Commedia』(2008)

受賞歴多数

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