感度と特異度

医学における感度と特異度

臨床検査の精度を評価する上で、感度と特異度は重要な指標です。これらの指標は、検査がどれだけ正確に病気の有無を識別できるかを示します。

感度とは

感度とは、「陽性と判定されるべきものを正しく陽性と判定する確率」のことです。感度が高い検査は、病気を持っている人を正しく陽性と判定する可能性が高く、見逃しが少ないと言えます。逆に、感度が低い検査は、病気を持っている人を陰性と誤って判定する可能性が高くなります。

特異度とは

特異度とは、「陰性のものを正しく陰性と判定する確率」のことです。特異度が高い検査は、病気を持っていない人を正しく陰性と判定する可能性が高く、誤って陽性と判定する可能性が低いと言えます。特異度が低い検査は、病気を持っていない人を陽性と誤って判定する可能性が高くなります。

感度と特異度の関係

感度と特異度は、互いにトレードオフの関係にあります。つまり、感度を高めようとすると特異度が下がり、特異度を高めようとすると感度が下がる傾向があります。これは、検査のカットオフ値（正常と異常を区別する基準値）の設定によって変化します。

例えば、ある病気で血清中の特定酵素の値が上昇するとします。カットオフ値を低く設定すると、病気の人を陽性と判定しやすくなりますが、健康な人を誤って陽性と判定する可能性も高くなります（高感度、低特異度）。逆に、カットオフ値を高く設定すると、健康な人を正しく陰性と判定しやすくなりますが、病気の人を陰性と誤って判定する可能性も高くなります（低感度、高特異度）。

臨床における感度と特異度の利用

一般的に、感度の高い検査は、除外診断（病気の可能性を否定する）に有用です。例えば、感度の高い検査で陰性であれば、その病気である可能性は低いと判断できます。一方、特異度の高い検査は、確定診断（病気を確定する）に有用です。例えば、特異度の高い検査で陽性であれば、その病気である可能性が高いと判断できます。

検査の目的によって、感度と特異度のバランスは調整されます。例えば、スクリーニング検査のように、できるだけ病気を見逃したくない場合には、感度を高く設定した検査が用いられます。一方、確定診断を行う場合には、特異度を高く設定した検査が用いられます。

感度と特異度に関する注意点

感度と特異度は、あくまで検査の性能を評価する指標であり、臨床的な判断はこれらの指標だけでなく、患者さんの状態や他の検査結果なども総合的に考慮する必要があります。また、「Bという症状は、Aという疾患に特異的だ」という言い方をする場合もありますが、この場合の「特異度」は、検査における特異度の概念とは異なります。

参考

感度，特異度，陽性適中率，陰性適中率については，以下の表を参考にしてください。



参考文献

日本疫学会 (2000):疫学辞典第3版,日本公衆衛生協会
M. H. Katz(2006):Study Design and Statistical Analysis: A Practical Guide for Clinicians,Cambridge University Press,2006.(邦訳） 臨床研究のための統計実践ガイド―論文の企画から投稿まで EDIXi出版部 2011


関連項目

疫学
二項分類
第一種過誤と第二種過誤
陰性尤度比
陽性尤度比
ROC曲線

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