慶州の戦い

慶州の戦い：朝鮮戦争における激戦地

慶州の戦い（キョンジュのたたかい、けいしゅうのたたかい、경주 전투、Battle of Kyongju）は、朝鮮戦争中の1950年8月から9月にかけて、国連軍と朝鮮人民軍（以下、人民軍）の間で繰り広げられた重要な戦闘です。この戦いは、朝鮮半島の東部地域における主要な戦いの一つであり、両軍が激しい攻防を繰り広げました。

戦いの経緯

8月18日、杞渓で挟撃された人民軍第12師団は、飛鶴山へ撤退しました。韓国軍の首都師団は、20日までに掃討を完了し、杞渓北方に新たな陣地を構築しました。部隊配置では、第18連隊が烽火峰-七谷山一帯、第17連隊が352高地一帯に配備され、第1連隊が予備として待機しました。一方で、第26連隊は第3師団へ転出し、機甲連隊は永川へ移動、海軍陸戦隊は原隊へ復帰しました。浦項では、第3師団が閔支隊と交代し、人民軍第5師団と交戦しました。

両軍の部隊編成

国連軍
第8軍（司令官：ウォルトン・ウォーカー中将）
第1軍団（軍団長：金弘壹少将→金白一准将）
首都師団（師団長：白仁燁大領→宋堯讃大領）
第3師団（師団長：金錫源准将→李鍾賛大領）
ジャクソン支隊（支隊長：ジョン・コールター少将）
第24師団（師団長：ジョン・チャーチ少将）

人民軍
第2軍団（軍団長：武亭中将）
第12師団（師団長：崔仁斗少将）
第5師団（師団長：金昌徳少将）

戦闘の経過

首都師団は8月22日から攻撃を開始しましたが、人民軍第12師団は4日間で再編成し、地形を利用して頑強に抵抗しました。首都師団は補給難と損害多発に加え、左翼の第18連隊が第15師団に圧迫されたため、25日に杞渓北側高地へ後退しました。8月26日夜、人民軍は大規模な攻撃を開始し、翌日早朝には杞渓を占領しました。この事態を受けて、ウォーカー中将はコールター少将に東部戦線の指揮を執らせ、ジャクソン支隊を編成しました。

8月27日、ジャクソン支隊主力の第21連隊第3大隊が安康に到着し、第17連隊がジャクソン支隊の支援を受け、杞渓を一時奪還しましたが、人民軍の反撃により、翌日には再び杞渓南側へ後退しました。

一方、第3師団も人民軍第5師団の攻撃を受け、8月25日には2～4キロ後退しました。8月28日に反撃し、興海南側に進出しましたが、戦力は底をついていました。8月末、首都師団は杞渓南側高地に、第3師団は浦項北側に防御線を構築しました。

9月1日、韓国陸軍は第1軍団長を金白一准将に、首都師団長を宋堯讃大領に、第3師団長を李鍾賛大領に交代させました。人民軍は、第12師団と第5師団からなる第5攻撃集団が安康-浦項の線を突破し、釜山へ進撃する任務を与えられました。戦力増強は行ったものの、食料や火器、弾薬の補給が続かず、兵士の士気は低下していました。

安康・慶州での戦闘

9月2日、人民軍第12師団が首都師団正面に攻撃を開始しました。杞渓南側高地を巡って激しい戦闘が繰り広げられ、4日未明に首都師団は安康南側の昆季峰、虎鳴里一帯に後退しました。第1軍団は機甲連隊と第3連隊を首都師団に配属して慶州の防御を強化しました。

同日夜、安康に進出した第12師団は戦車を先頭に南進を開始しましたが、韓国軍の対戦車特攻隊により撃退されました。ウォーカー中将は慶州の防御を強化するため、アメリカ軍第24師団を投入し、ジャクソン支隊はチャーチ支隊に改称されました。

9月6日未明から、第12師団は昆季峰への攻撃を開始しました。首都師団は一時陣地を突破されましたが、反撃して回復しました。後方に浸透した人民軍もチャーチ支隊の第19連隊によって撃退され、昆季峰の激しい争奪戦が展開されました。

浦項・兄山江での戦闘

浦項正面でも9月2日から人民軍第5師団の攻撃が開始されました。9月5日、第3師団長は部隊に兄山江南側で防御するよう命じました。同日、第3師団は渡河撤退し、兄山江南岸に防御線を構築しました。

9月6日、第10連隊が原隊復帰したため、人民軍が雲梯山にまで浸透しました。これにより、迎日飛行場に展開していた第5空軍は日本へ撤退しました。第3師団は、人民軍の渡河を阻止するため、第22連隊を玉女峰に進出させました。

戦況は不利となり、9月8日夕方、第3師団は松洞-長洞の線に後退しました。慶州市民は人民軍の侵入に動揺したため、警察と憲兵が民心の安定に努めました。

国連軍の反撃

人民軍の浸透報告を受けたウォーカー中将は、アメリカ軍第24師団にこれを阻止するように命令しました。チャーチ少将は、金白一准将と協議し、雲梯山奪回を第24師団が、退路遮断と掃討を韓国軍が担当することを決定しました。

9月10日、アメリカ軍ダビッドソン支隊が雲梯山を攻撃しました。翌日、オーストラリア軍の爆撃機の援護を受け、雲梯山を奪還しました。

9月12日夜、第17連隊が昆季峰を奪還し、安康南側の主抵抗線を回復しました。第3師団も迎日を奪還し、兄山江一帯の主抵抗線を回復しました。第12師団と第5師団は攻撃を諦め、守勢に転じました。

まとめ

慶州の戦いは、朝鮮戦争において重要なターニングポイントとなりました。激しい戦闘が繰り広げられた結果、国連軍は人民軍の侵攻を食い止め、反撃の足がかりを築くことができました。この戦いは、その後の戦況に大きな影響を与えただけでなく、両軍にとって多くの教訓を残すことになりました。

この戦いの詳細な内容については、以下の文献も参照してください。

韓国国防軍史研究所 編著、翻訳・編集委員会 訳『韓国戦争 第2巻』かや書房、2001年
* 佐々木春隆『朝鮮戦争/韓国篇 下巻 漢江線から休戦まで』原書房、1977年

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