懸造

懸造（かけづくり）についての詳細

懸造とは、崖や高低差のある土地に建物を建てるための特異な建築様式であり、主に寺社建築に用いられています。この工法では、長い柱や貫で床下を支え、安定した基盤の上に上部構造を形成します。このようにして建てられた建物は、一般的に崖の先端や急斜面に位置し、景観を眺めるための舞台のような役割を果たします。

懸造の歴史と呼称の由来

懸造という言葉の起源は、平安時代の文献に見られます。ここでは「かけつくる」という動詞が用いられ、山間にある家屋を指していました。鎌倉時代の中期になると、「かけづくり」という名詞が使われるようになります。当時は主に寺院や修行の場としての建物を指していましたが、室町時代末期には河岸に建てられるものも含まれるようになり、範囲が広がりました。

近世になると、言葉の使用も変化し、さまざまな漢字（掛、崖、繁など）が当てられるようになりました。また、「舞台造」という用語もあり、これは懸造の一種として、特に清水寺や長谷寺の本堂前面に突出した部分に関係していました。

懸造の構造と特徴

懸造はその構造によって、非常に強固であり、床下にはラーメン状の柔軟な架構が形成されています。この工法は、京都の清水寺をはじめとする日本各地の寺社建築に多用され、特に清水寺本堂は1633年に建立されて以来、定期的に点検や修理が行われています。これにより、未だにその構造が健在である理由は、懸造の構造が点検や部材の取替えを容易に行えるためです。この特異な設計は、日本の伝統的な木造技術の大きな特徴でしたが、現在の建築法規では、そのような柔軟性が失われてしまっています。

歴史的背景

懸造が最初に記録されたのは平安時代中期のことで、石山寺本堂や長谷寺本堂、そして清水寺本堂などにその形跡があると考えられています。しかし、現存する建物は再建されたものが多く、当時の形態を直接感じることは難しいです。これらの建物は、岩の上に設置され、岩自体を崇拝するための施設として機能していたとされています。それだけでなく、これらの建物は観音霊場としても重要視され、岩を特別な聖地として扱ったと考えられます。

平安時代末期からは、延暦寺や醍醐寺などで懸造が見られるようになり、これらの寺院でも岩との関係性が窺えます。鎌倉時代中期以降には、岩に屋根を接続するような形での懸造も増えていきました。近世になるにつれ、懸造は規模が小さくなり、整地された場所に建てられることが多くなり、元の意味合いから形骸化していきました。

近世の懸造は、観賞や鑑賞の対象となり、修行を目的としたものから、庭園や寺社の一部としての役割に変わっていったと考えられます。こうした変遷を経た懸造は、無数の美しい寺社建築を後世に残すことになりました。

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