成りあがり

矢沢永吉激論集・成りあがり

『矢沢永吉激論集 成りあがり How to be BIG』は、日本の伝説的なロックミュージシャン矢沢永吉による自伝的著書です。本書は、彼の赤貧の少年時代から、音楽業界での成功までを描いた内容で、1978年7月25日に初版が出版されて以来、200万部以上を売り上げるロングセラーとなっています。著者の糸井重里が「聞き書き」の形式でまとめており、そのリアルな語り口が魅力です。

出版の背景

本書は、1976年1月8日に中野サンプラザで行われた矢沢の公演を取材していた『GORO』の編集者、島本脩二のアイデアから生まれました。島本は当時、矢沢に強い印象を抱き、彼のストーリーを多くの人に届けたいと考えました。彼の父親がその本を手に取るような形で、矢沢の若者へのアピールを重視した本を作る意図があったのです。これにより、矢沢が日常的に使っている言葉や表現を取り入れた構成を目指しました。

そこで、糸井重里がインタビュアーとして起用されます。彼は当時まだ無名の存在でしたが、広告業界では注目されていたため、彼のユニークな視点と感性が本書に込められています。糸井自身も矢沢の話し方や息遣いをしっかりと捉え、よりリアルな文章に仕上げることに成功しました。これが、矢沢の真の姿を伝える大きな要因となりました。

タイトルと出版の経緯

タイトルの「成りあがり」は、矢沢自身の言葉を踏まえたもので、島本と糸井の合意のもとで決定されました。当初、矢沢はこのタイトルに対して戸惑いを見せましたが、最終的には納得し、受け入れました。また、当時はゴーストライターの問題があり、透明性を大切にするために、糸井にあとがきも書いてもらうことにしました。

本書は、書籍としての価値だけでなく、商業的にも成功を収めました。出版社の小学館は文庫本を出版する際に、それまでの常識を覆し、角川書店に移籍します。見城徹が角川の編集者としてしぶとく交渉し、文庫化にこぎつけました。その結果、100万部以上のベストセラーとなり、多くの読者に愛されています。

名著としての評価

『成りあがり』は、単なる自伝にとどまらず、自己啓発書とも評価されています。この本は、特に自分の力で成功を目指す読者に勇気を与える内容となっており、さまざまな層の人々に影響を与え続けています。糸井重里はこの本を「人生を変えた」と正直に語り、その影響は彼の文章スタイルにも色濃く残っています。

また、矢沢のサクセスストーリーは日本のロックシーンに多大な影響を及ぼし、彼のパブリックイメージの形成にも関与しています。この書により、矢沢自身のブランドが一層強化されたとも言えるでしょう。

関連作品

本書を原作としたテレビドラマや漫画も存在し、矢沢の伝説的なキャリアを視覚的に再現しています。特に2002年のテレビドラマ『成りあがり』では、TOKIOの松岡昌宏が矢沢を演じ、多くのファンの心をつかみました。こうしたシリーズは、矢沢の魅力をさらに広げる役割を果たしています。

『成りあがり』は、矢沢永吉の人生と音楽への情熱を描いた名作であり、読む人に深い感銘を与える一冊です。

もう一度検索